*[映画]かがみの孤城

サービスデーの日で、レイトショーの一つ前の回で見た。
観客は10人ぐらい。
スペシャルポストカードもゲットできた(ウレシノ×フウカとココロ×リオン)。



モーニング娘。羽賀朱音さんが原作小説の大ファンで、絶対に映画も
見に行くとブログに書いていた。
そんなにいいのか、と思っていたらツイッターのタイムラインで絶賛の
声がいくつか上がっていたので見に行った。


たしかに素晴らしい作品だった。
謎が解き明かされるときに、すべてがピタリと合わさっていくような
美しい構造を持っていて、それが鑑賞後の余韻となって響いている。
興行収入がどれくらいなのか分からないが、「すずめの戸締まり」と
同じぐらい評価されるべき映画だと思う。



以下、ネタバレあり



原作は未読なので、映画からしか読み取れないのだが、この作品の
テーマのひとつはいじめである。


いじめられた中学生たちが逃避する場所として、かがみの孤城はある。
作中では、学校の対応の酷さが明らかになっており、フリースクール
すべての子供を救えるわけではない。


もし現実に傷ついた子供たちがいたなら、この作品が救いの一助と
なるはずである。


ひとつ気がつくのは、現実世界に登場する大人の男性にろくなやつが
いないことである。主人公ココロの父親はほとんど姿を見せない仕事
人間だし、アキはレイプされそうになる。
逆に、大人の女性は頼りになる人が多い。ココロの母親もそうだし
何より喜多嶋先生がいろんな意味で物語の核心を担っている。
作者は特に意識していないのかどうか分からないが、ジェンダー
役割としてそう考えているのかな、とも思う。



またしても、と苛立ったのは、いじめの加害者である真田という
少女が、なんの罰も受けていないことである。
ココロの友達の萌ちゃんからは「恋愛とか目の前のことにしか
興味がなく、ずっとあのままだ」と切り捨てられていて、私も
その通りだと思うのだが、世間では真田たちのような人が
陽キャとしてスクールカーストの上位に立ち、どれだけ人を
傷つけたか反省することなく一生を終えるのである。
(「3月のライオン」でも、いじめの加害者が反省することは
なかった。現実はそういうものだとしても悔しい)


映画の予告編で、たまたま「なのに、千輝くんが甘すぎる。」を
見て、真田たちはこういうのを見て、たぶん「かがみの孤城」は
見ないんだろうな、と思った。


そろそろ、ああいう加害者たちをどうにかすべきなのでは
ないか、と考えるのだが、加害者にも人権があるのだった。





おおかみ様を演じた芦田愛菜は、私の印象では今一つで、
もし久野美咲が演じていたらどうだったのか、と思わない
でもない。


なぜ同じ中学校に通っている生徒たちなのに、現実の学校では
出会えないか、という謎は、途中でなんとなく分かってしまった。
小説なら叙述トリックでいろんなヒントを出しつつ隠せるだろう
けど、映像はなかなか難しいだろう。
二周目からは、たぶんあちこちにヒントが出てくるのが分かって
楽しめるはずだ。


良い作品なので、もっとたくさんの人に見てほしい。
年末年始におすすめの一本である。