役者でイメージするのは、劇団に入り滑舌などの基礎的訓練をして、演出家に

心を折られ、パワハラやときにはセクハラに耐え、収入はほとんどなく、ずっと

アルバイトをしている、というものだ。

 

 

テレビドラマや映画に出演して売れっ子になるのはごく一部で、9割の俳優は

地道に舞台に上がり、演出家に灰皿を投げつけられている。

こういう人たちは、難しい演劇理論も読みこなし、どんな役もこなせるの

だろう。

 

 

その一方で、全くそういう訓練を経ずして売れっ子になる人もいる。

例えばリリー・フランキーだったりピエール瀧がそうだ。

もちろん彼らだって現場で演出家に絞られているかもしれないが、

求められているのは演技力というよりは雰囲気だろう。

 

 

観客としては、作品が面白ければそれでいいので、役者の基礎的な

演技力があるかないかは二の次である。

雰囲気だけでも、監督がオッケーを出せばそれは監督の責任だろう。

 

 

そうすると、演技力とはなんぞや? というややこしい話になる。

才能と一緒で、うまい人は最初からうまいし、下手な人は訓練しても

あまり上達はしない、というものだろうか。

 

 

歌手だったら、うまいかどうかは子供のころから分かるし、うまい人

だけがプロになるだろう。

演技はどうか。カラオケのようなものがあればいいのだが、そういう

場はない。

ものすごい演技の才能を持っているのに、自分も他人も気が付かず、

普通のサラリーマンになっている人だっているかもしれない。

その方が幸せなのだろうけど。

 

 

嘘をつくのは演技力が必要かもしれない。

つまり子供のころから嘘がものすごく上手な人がいたとしたら、

その子は役者になれるかもしれない、ということか。

 

 

義務教育では、音楽や美術で才能のスクリーニングをしている一面が

あるが、演技はやってない。

なぜかダンスは義務教育に組み込まれたが、芝居もやらせてみては

どうだろうか。