*[本]性格とは何か

心理学でいうパーソナリティを解説した一冊で、私にとってはやや
難しかった。統計を学ばないとちゃんと理解できない気がする。


ただ、世間一般で語られる血液型や星座のような類型はあまりにも
雑だし学問ではない。
心理学では、ビッグファイブと呼ばれる5つの次元で分析している
そうだ。RPGの「すばやさ」とか「ちから」などのパラメーターの
ようなものか。


この分析方法で統計処理すると、国や地域によって違いが見られる。
なぜそのような違いが見られるかは明確に断定はできないが、それが
偏見や差別に利用されることもある。気をつけたい。

 もうひとつの関心は、世の中全体に情緒不安定的で活発さに欠け、
自尊感情が低下するような変化が起きたとき、そこから何が起きる
のかという問題である。


 人間は基本的に、ポジティブな自己認識をもちたいと動機づけられる
ものである。自分のことを悪く言われるよりは褒められたい。無視
されるよりは認めてもらいたい。劣った人間だとみなされるよりは、
優れた人間だと思われたい。このような気持ちは、多くの人がもつ
ものではないだろうか。


 日本全体がこのような状態になったときに生じるひとつの現象が、
「日本はすごい」と思いたい気持ちなのかもしれない。日本は常に
海外から注目を集めており、日本はアジアの中でも特別で、日本は
ほかの国にない技術をもっており、日本の自然はほかの国にはない
美しさがある……。いつからか、テレビ番組の中でこのような
メッセージが増えてきてはいないだろうか。


 ここでは存在脅威管理理論という考え方が、興味深い洞察に
つながると考えられる。私たちは、死を避けることはできない。
この死を避けることができないという事実は、私たちに脅威を
もたらす。その脅威を和らげるために、人は宗教や芸術などを
拠り所にしようとする。そして自尊感情を高めることも、死の
脅威を和らげることにつながる。(中略)


 ところが、日本人全体の自尊感情だけでなく全体的にポジティブな
自己認識は、なかなか高まってくれない。それはおそらく、私たちの
文化の中に、ポジティブな自己認識を高めるような仕組みが不足して
いるからではないだろうか。(中略)そこに輪をかけて、経済を
中心とする社会的な停滞が襲いかかってきた。


 そんな私たちが死への恐怖に直面すると、何が起きるのだろうか。
そこでは、自尊感情以外に死の恐怖を和らげる仕組みが必要になる。
そのひとつが、自分自身をより大きな枠組みと同一視することである。
そして、その大きな枠組みへの優位性を主張することで、自尊感情では
まかないきれない脅威への対処をしようとする。それが「日本はすごい」
また「他国よりすごい」(中略)という思いになり、さらにそこから
「他国は日本よりも劣っている」「日本を批判するなんて許せない」
という認識へとつながってはいないだろうか。


 もしかしたら、多くの人々が死への恐怖に直面させられた東日本
大震災以降に、日本のすごさを喧伝するテレビ番組が次々と作られて
いったことも、このことを反映しているのかもしれない。そうだと
したら、それは、自分たちを安心させ、心地よくさせるための
ひとつの反応なのだろう。(p144-146)