- 作者:司馬 遼太郎
- 発売日: 2008/11/07
- メディア: 文庫
文化とは縁が薄い壱岐・対馬を司馬遼太郎一行が旅する。
水田が確保しやすかった壱岐と、ほとんどできなかった対馬では、
住民の人柄もずいぶんと違ったようだ。
壱岐では親切な人が多かったのに、対馬ではタクシー運転手に無礼な
扱いを受ける。前者は農村共同体で後者は漁村共同体だからだろう、
と結論づけているが、今ではどうなのだろう。
壱岐のよろず屋で飲み物を買ったとき「罐に穴をあけていると」と
書いている。1978年の離島では、プルタブ缶はまだなかったことが
分かる。
検索すると、飲料用缶容器がすべてプルタブ式になったのは1983年
だそうだ。
↓
本書は、司馬遼太郎が復員後に小さな新聞社に勤めたときの
同僚だった青木幸次郎という戦友の訃報から始まる。
彼は対馬出身で、一度連れて行ってやると言われたが、その
約束は果たされなかった。
これまでのシリーズと違って、いくぶん小説っぽいというか、
感傷的なところもあって、それが壱岐・対馬の風景をやや
荒涼な感じに見せている。
また、朝鮮半島とのつながりについての考察も多く、はたして
現代ではどうアップデートされているのか気になる。