*[本]街道をゆく13 壱岐・対馬の道

街道をゆく 13 壱岐・対馬の道 (朝日文庫)

街道をゆく 13 壱岐・対馬の道 (朝日文庫)

古代から朝鮮半島と往来があった島々なのに、不思議と朝鮮半島
文化とは縁が薄い壱岐対馬司馬遼太郎一行が旅する。


水田が確保しやすかった壱岐と、ほとんどできなかった対馬では、
住民の人柄もずいぶんと違ったようだ。
壱岐では親切な人が多かったのに、対馬ではタクシー運転手に無礼な
扱いを受ける。前者は農村共同体で後者は漁村共同体だからだろう、
と結論づけているが、今ではどうなのだろう。



壱岐のよろず屋で飲み物を買ったとき「罐に穴をあけていると」と
書いている。1978年の離島では、プルタブ缶はまだなかったことが
分かる。
検索すると、飲料用缶容器がすべてプルタブ式になったのは1983年
だそうだ。



本書は、司馬遼太郎が復員後に小さな新聞社に勤めたときの
同僚だった青木幸次郎という戦友の訃報から始まる。
彼は対馬出身で、一度連れて行ってやると言われたが、その
約束は果たされなかった。


これまでのシリーズと違って、いくぶん小説っぽいというか、
感傷的なところもあって、それが壱岐対馬の風景をやや
荒涼な感じに見せている。


また、朝鮮半島とのつながりについての考察も多く、はたして
現代ではどうアップデートされているのか気になる。