*[本]色の道商売往来

色の道商売往来―平身傾聴・裏街道戦後史 (ちくま文庫)

色の道商売往来―平身傾聴・裏街道戦後史 (ちくま文庫)

三浦しをんのエッセイで紹介されていたので、ちょっと読んでみたくなって
街のジュンク堂に行ったのだがなかった。
ネットの古本で90円プラス送料だったので迷わずポチった。


この本は昭和40年代に、前半はその当時の性風俗について、後半は戦前から
終戦あたりの売春稼業について、当事者と対談したものをまとめたものである。
対談は小沢昭一が受け持ち、同伴した永六輔が原稿にまとめて補足している。


なので、平成の終わりにこれを読むと、50年前の性風俗も古びてよく分からなく
なっているし、戦前や終戦直後の混乱期の話になると、もう別の世界の話である。


ただ、昔の人も現代の人も、同じぐらいの比率で売買春しているのだろうな、
とは思う。今は携帯デバイスがあるので、より個人的にカジュアル化している
から、あまり後ろめたさがないのが違うぐらいか。



それにしても、終戦直後の街娼の話は、ほんまかいな、と疑ってしまうぐらい
すごかった。ほとんどマッドマックスの世界である。
女性の人権というのは、ごく最近になってようやく守るべきものとして意識
されたのだなぁ、と。


その街娼も、前の東京オリンピックあたりに取り締まりが厳しくなって
あまり目立たなくなったそうだが、東電OL殺人事件の被害者も街娼を
していたのだから、少なくとも1997年ごろまでは存在していたのだろう。


しかし、いまなら街角で客引きをしなくてもスマホからできるのだから、
若い女性はもう街角に立つことはないと思う。
それでも、2020年の東京オリンピックまでには、また取り締まりが厳しく
なって、性風俗も変化していくのではないか。



もしかしたらコンビニのエロ本のように、表立ってはないものにされて
社会が漂白されるような気もする。
と同時に、素人と売春婦の区別があいまいになって、不特定多数の人と
セックスするのは別に普通のことになっていくかもしれない。


現実の女性が信じられなくなった弱い男性たちは、アイドルや二次元に
貞操を求めるようになり、裏切られ傷つくのだ。いや二次元キャラには
傷つけられないけれども。



2000年代の性風俗をまとめた対談本を誰か作らないものだろうか。
テレビでは「トゥナイト」で山本監督がそれをやっていたが、今は
誰もやってない気がする。