- 作者: 原武史,三浦しをん
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2019/02/27
- メディア: 単行本
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一冊にまとめてくれた。ありがたいことである。
面白かったところを抜書きしてみる。
原 安倍政権は、天皇が女系にさえ移らなければ、あとはすべて妥協する
かもしれません。皇居を解放するよりも、女系天皇が嫌なのです。
三浦 まじか。どういう理屈なのかまったくわからない。
原 我々には理解しがたい。「万世一系」はたかだか明治から終戦までの
間に作られたイデオロギーにすぎないのに、ある種の人々にはそれが守る
べき「伝統」に見えてしまうんでしょう。その考えが政権の中枢になお
生き続けている。
三浦 宗教みたいなものですね。
原 皇位継承者がいなくなって皇統が自然消滅する可能性は理解している
けれども、女系天皇に移行したら天皇制自体が廃止されたのも同然で、
「国体」がなくなると思っている。
三浦 えっ(絶句)。
(p71-72)
三浦 ところで原さんは「シン・ゴジラ」を観ましたか?
原 はい、観ましたが、鉄道的には見るところがなかったですね。
三浦 鉄道的に……観るものなのか、映画って?
原 それよりも横浜市磯子区洋光台の公団住宅が出てきたところに
興奮しました。蒲田から品川を通り東京湾に戻ったあとは、鎌倉で
再上陸し、洋光台、武蔵小杉、丸子橋、世田谷、そして地下鉄を
挟みますが、そのあとは立川市の多摩都市モノレールの車庫ぐらい
しか出てこない。
三浦 クライマックスの電車の活躍は? 胸が熱くならなかったですか?
原 だってあれ、模型じゃないですか……。洋光台の団地は本物が出て
きましたが、鉄道は模型だとすぐにわかってしまった。
三浦 ええっ、模型じゃダメなの!?
原 模型だとわかってしまうと、リアルな感じが出てこない。
三浦 なんというテツ原理主義者なんだ、怖いよ!(笑)
(p108-109)
原 リニア開発の根底にあるのはナショナリズムです。新幹線の
所要時間だけでは中国に負ける。北京-上海間と東京-博多間だけを
比較すると、距離が長い中国のほうが、所要時間が若干短い。JR東海
としてはそれが絶対許せないんでしょう。
三浦 ええー、そんなの競争する必要ないのに。
原 葛西敬之の発想です。「中国にだけは負けたくない」。
三浦 なんでそういう発想になるんだろう。今のJR東海の社長さんですか?
原 いや、名誉会長です。JR東海の発足当時からリニアに熱心でした。
私がJR担当の新聞記者をしていたとき、宮崎県にあったリニアの実験線の
視察に同行したこともあります。
三浦 これから人口も減るし、わざわざ現地に赴かなくても、ネットで
会議できる時代なのに、リニアの需要ってそんなにあるんでしょうか。
社内の誰かが、「ドン」に方向転換を提言すればいいのに。
(p141-142)
私が気になったところを抜書きしてみたが、鬼怒川温泉に出かけた
ときなどの原武史の奇行(?)を、しょうがないなぁ、という目線で
見守る三浦しをんも推せる。
もし第二弾があるなら、京都鉄道博物館を訪れてテンションがマックスに
なった原武史が奔馬のようになっているのを三浦しをんが御している
ところが見たい。
「原さん、落ち着いて。どうどう」