日曜日のレイトショーで観客は20人前後。封切り直後としては寂しい。
この映画は、妹ができたばかりの3歳か4歳ぐらいの男の子が成長して
いく話である。
父親が建築家なので、庭が家の中段にある変わった設計になっている。
その中庭が様々な世界の入り口になっていて、高校生になった妹に
会ったり、亡くなった曽祖父に遊んでもらったりする。
本作は何か目的があって、それに向かって突き進む大冒険ではない。
主人公の心が成長する小さな積み重ねがファンタジックに描かれて
いて、かなり断片的に見える。
その断片性がかえってリアルというか、子供の心象風景に沿っていて
面白かったし、細田守にとってきわめて私小説的でもある。
夏休み映画としてジブリ的なスペクタクルを期待すると肩透かしに
終わりそうだが、監督の成熟を実感する佳作だと思う。
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ただ、マーケティングとしては子育てに一段落した世代にヒットする
かもしれないが、それ以外の若者とか独身のオタクにとってはあまり
共感を得られないのではなかろうか。
私も子育てをしたことがないから、子供ってこんなに暴れたり散らかし
たりするのかぁ……と驚いたし、見ていてイラッと思う部分もあった。
そこがいいという人もたくさんいるのだろうけど。
映画の終盤では、中庭の木が主人公の家庭のインデックスになっていて、
先祖からの様々な情報が葉っぱ一枚一枚に刻まれていることが明かされる。
その情報は、未来の主人公たちにも受け継がれていく、という流れだ。
家庭を持たずこのまま死んでいくであろう私は、この先祖からの情報を
自分の代で断ち切ってしまったのだ、と後ろめたく思った。
単なる僻みである。
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イチャモン的な解釈をするなら、主人公の男の子は細田守で、妹は
新海誠である。
「時をかける少女」から「バケモノの子」あたりまでは、あんなに
ちやほやしてくれたのに、「君の名は」が出てきたとたん大衆の
愛情はそちらに向いてしまう。
実際に細田守と新海誠の関係はどんなものなのかは知らないけれど、
これからも一緒にがんばっていこうというメッセージがあるような
気がする。
逆に心配なのはスタジオポノックである。
予告編で短編作品を上映することを知ったが、どういういきさつで
そうなったのか知りたい。