タイの僧院にて

タイの僧院にて (中公文庫 あ 5-1)

タイの僧院にて (中公文庫 あ 5-1)

青木保は友達のゼミの指導教官だったので、この本は読もう読もうと
思っているうちに30年経ってしまった。


ちょうど読み進んでいるときに、タイの洞窟に閉じ込められた少年たちの
話題が入ってきて、彼らのコーチが修行僧をしていたことが分かった。
本書で

 一人の人間が文化的社会的に成熟してゆくさまを計る指標の一つに、精神的な
成熟を外的に画するこのような僧修行の「制度」が組み込まれている社会は、
幸せだという気がする。すべてが権力欲と物欲だというのでは救われない。別の
次元での評価基準を示すものが、やはり存在すべきではなかろうか。(p 99)

と書いてあって、タイ社会の良いところが実際に現れていると感じた。



それにしても、こんな修行をした文化人類学者は、その後現れているのだろうか。
文系の予算が削られているいまの時代では、もういないような気がする。
この文庫本もおそらく絶版になっているはずで、日本が文化的に豊かだった時代は
ゆっくりと遠ざかっているのではなかろうか。