Boaz2013-11-28

嫌な記憶がフラッシュバックすることがよくある。


あんなことを言うんじゃなかった、あんなことをするんじゃなかった、
と布団をかぶって「うーっ!」を唸りたくなるような過去の出来事が、
実に生々しく数秒間だけ脳裏に再現されるのである。


あまりに頻繁だと日常生活が営めなくなるので、心の病気と診断され
るのだが、幸か不幸か、それは一瞬だけで過ぎ去るので、特に不都合
はない。


なぜこんなに過去の嫌な出来事がよみがえるのか? 
それは現在に何もないからである。
いや、現在というよりも、未来への案件がないから、と言ったほうが
正確だろう。


仕事とか子育てとか妻や愛人との関係とか、そういう面倒くさいことは
一切ない。親を病院に連れて行く以外、未来の予定は白紙だ。


それは自由かというと、そうでもない。
定年退職後の、特に悩みのない老人のようなものだろうか。


では、そういう老人が、過去の嫌な記憶のフラッシュバックに悩んで
いるかというと、そうでもなさそうである。本当はどうだか分からない
けれども。


私の推測では、老人になると、そういう昔のことはどんどん忘れられる
からではないだろうか。
そして都合のいい記憶が、現在進行形で作られているのではないか。


もうひとつは、嫌な出来事の対象になる相手がすでに死んでいることが
多いから、気が楽になっているのかもしれない。


私が気に病んでいるようなことは、ほとんどの人が忘れているような
些細なことだろうと思う。
それでも、まだ相手が生きているであろうと思うと、やはりいたたま
れない気持ちになってしまうのだ。


こんな現象が起きるのは、私がまだ他人に尊敬されたいという欲望を
持っているからだろう。
できれば過去の失敗を修正して、いい人間になりたいと思っている。
もはやそんな望みはないのに、実に愚かである。


もうそろそろ、自分の無意味さを飲み込まなければなるまい。