想像力の枷

BSイレブンで「機動戦士Zガンダム」の再放送をしており、ずっと
見ている。
恥ずかしながら、Zを見るのは初めてだ。


ただ、オッサンになってから見ないと、この複雑な話は理解できな
いのではないか、と思われるところも多い。
この年で初見できるのは幸運なのかもしれない。


先日は第31話「ハーフムーン・ラブ」という回だった。
月面都市に寄港した主人公たちが、潜入した敵を見つけ、爆弾を仕
掛けられたことを知る、というストーリーだ。


この話で、主人公のカミーユは離れているファと連絡をとるために、
館内放送を頼んで放送室に電話してもらっている。
そして母船に連絡するのも、その放送室の電話でやっている。


現在の私たちなら、なぜ携帯電話を使わないのか不思議に思うだろう。
月面都市を建設できるほどのテクノロジーがありながら、どうして
携帯電話が全く普及していないのか。


おそらく、このアニメを製作している1985年当時は、市民が携帯電話
を持つなどという想像はしていなかったのだろう。
(同様の例は、パトレイバーでも見られる。21世紀の話なのに、やはり
携帯電話は描かれていない)


だが私は、この作品には瑕疵がある、と言いたいわけではない。
そうではなく、人間の想像力の枷というものを考えてしまうのだ。


いま製作されているSFアニメの小道具には、当たり前のように携帯電
話が使われている。
けれども、それは現在の技術の延長線上でしかない。
(その意味では、『電脳コイル』は素晴らしいアイデアに満ちている
と言えよう)


電話というものはそういうものである、と思い込んでしまうと、未来
の話にもそれが反映されてしまう。
平凡な人間の想像力というのは、その程度でしかないのかもしれない。


しかし、革新的な技術は誰かのアイデアと偶然の後押しによって一気
に普及してしまうものだ。
想像力の枷を超えたものが作り出され、過去の作品を色あせさせてし
まうことは、いいことなのではないか、と思う。


私が老人になって昔のアニメを見たとき、あれが普及してないなぁ、
と思う何かが発明されているかもしれない。
それはちょっと楽しみである。