Boaz2013-06-24

そういえば荒木飛呂彦は、ふきだしの文字もマンガの一部として表現した
人だった。
有名なこれです。

あまり真似している人はいないような気もするけど、集英社のマンガは
ほとんど読んでいないので、やっている人はいるかも。



この「無駄無駄無駄」は、現在はデジタル入稿が主流だから分からないが、
少なくとも1990年代までは写植(しゃしょく)を貼っていた。


写植というのは写真植字の略で、注文したフォントの文字を銀塩カメラ
写真のようにプリントしたものである。
(つまり注文してから出てくるまで、どんなに急いでも小一時間はかかる)


写植屋には大手の写研という会社とモリサワという会社があって、講談社
写研という会社の作ったフォントを使っていた。



マンガ編集者は、ネームの段階でふきだしの文字を写植屋さんに注文して
おく。通常は2日ぐらいかかる。


ふきだしの文字は、たいてい“石井太ゴシック+中見出しアンチック”と
いうフォントで、通常は指定しなければこれにしてくれる。


心の中で思っている文字は、“ナールD”や“石井細明朝”一般的だが、
編集者やマンガ家の判断で変えてもいい。
あまりフォントを多く使うと読みづらくなるので気をつけなくてはならない。


マンガの原稿を受け取ったら、ふきだしごとに印刷された写植を切って、
糊でふきだしの中に貼り付ける。
大人向けはふりがなはないが、少年誌はふりがなを指定しなければならず、
けっこう面倒くさい。


急なネームの変更や、写植屋の打ち間違いがあると、新しく注文しなければ
ならない。入稿ギリギリだと超あせる。
気がつかずに間違ったままだと、単行本のときに修正する。



ジョジョの「無駄無駄無駄」は、“ゴーシャH”という写植だと思う。
迫力のあるセリフのときによく使うやつだ。
文字の大きさが大きくなるほど、行間も広くなってしまうので、指定
して行間を狭くしてもらうか、切って狭めているはずである。


なお、ふきだしの中ではなく、絵に文字がかかる場合は、半透明の紙を
かぶせて、その上に写植を貼って指定する。これもけっこう面倒くさい。
白黒反転文字も同様に処理する。



現在は、たぶんコンピュータの画面上で処理できるはずなので、急な変更
にもすぐに対応できると思う。
なんだったら、マンガ家がフォントを指定しているかもしれない。
便利な時代になったものです。


でも、もしかしたらこういうフォントの技術も日本だけのガラパゴスかも
しれない。