平日のレイトショーで観客は6人。
公開4日後でこの人数は興行的に厳しそうだが、良い映画だった。
舞台は北極百貨店という動物のためのデパートで、そこに
配属された新人コンシェルジュの人間の女性が主人公である。
擬人化した動物たちが買い物をするのをお手伝いしながら
彼女が成長していく物語だ。
お客でクローズアップされるのは、絶滅した動物たちである。
映画のなかでは、初代社長の海鳥が絶滅したのと同じころに
世界で最初の百貨店が誕生した、と語られている。
人間が滅ぼした動物たちのお世話をするのに、人間の女性が
右往左往する、というのが作者の企みであろう。
そして、大切な人のために何か贈り物をする気持ちを
尊ぶことが幸せなのだ、という気づきを視聴者に
もたらしてくれる作品だった。
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視点を広げると、地方ではデパートそのものが絶滅しつつ
ある。山形県や徳島県では、すでにデパートがない。
松山市も、三越が売り場の迷走で青息吐息である。
社会構造が、デパートの黄金期とは変わってしまった。
格差が広がり、地方の中間層は郊外のショッピングモールに
クルマで出かけるようになった。
憧れの高級品ではなく、そこそこ安いものを買うのである。
極言するなら、デパートは新自由主義によって絶滅する
のだ。生き残るのは富裕層が多くいる大都市だけだろう。
地方の人は、コンシェルジュのいるような格式の高い
百貨店という文化を失ったのである。
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私はこの映画に登場する絶滅種たちに自分を重ねて
しまった。当たり前だが、私が訪れるような北極百貨店は
どこにもないし、優しくしてくれるコンシェルジュさんも
いないのです。
私のようなデパートの黄金期を知っている世代は、つい
このような悲しい見方をしてしまうのだが、若い人は
どう思っただろうか? 大都市のデパートに通い慣れた
人が見ても感想が違うかもしれない。