桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)

桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)

前から見たいと思っていたが、BSプレミアムで放送していたのでようやく見る
ことができた。


今の高校生のスクールカーストの現状はこういうものなのだろうか。
だとしたら、私は絶対に映画部的なポジションになるので、学校に行くのが
辛くなりそうだ。


昔の高校にもぼんやりとした格差はあったけれど、ここまで露骨ではなかった
ような気がする。
それとも私が過ごした地方の進学校がそうだっただけで、大都市の公立高校は
80年代からこんなものだったのだろうか。


いつの間にかヤンキーにあった反体制的なものが退場し、代わりに異性にモテる
かどうかが価値基準になったのだろう。
思春期の男女が大勢いるのだから当たり前だろうけど、残酷なシステムでもある。


高校生だけならともかく、大人になってもモテ基準が適用されると、生きづらく
なる。実際、社会がギスギスしたような気がする。
やたらと女子力をアピールするのはその一端か。



たかだかバレー部の男子が一人やめただけの話なのに、世界が崩壊するような
大事として描写されている。


それは大人になってから相対化されるもので、現役の高校生にとっては学校が
世界の全てなのだからしょうがないのだろう。
そのような痛々しさや微笑ましいところを、ゾンビ映画を使ってうまく表現
していたと思う。



この作品を「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」と比較する人も多いだろう。


「俺ガイル」はライトノベルなので、主人公が上位カーストたちを出し抜くカタルシス
あるが、映画版「桐島」にはそれがない。
ただ、屋上で東出昌大神木隆之介に8ミリビデオを向けて対話する描写がそれに当たる
のかもしれない。


もっとも、現実は容赦なく神木隆之介やサクソフォーンの子を失恋させている。
モテない人はどうしたってモテないのだ。



じゃあ、上位カーストの少年少女たちは、就職して社会に出たらどうなるのか。
モテるかどうかの基準はあるものの、金儲けという基準が新たに出現するので、
学生時代のようなカーストに安住することはできないだろう。


私は「桐島」に登場した高校生たちが、10年後どうなっているのか、読んでみたい。
より辛い現実を描かなければならないとしたら、若者たちの絶望は深まるばかり
ではなかろうか。