*[本]はじめてのギリシア神話

中学生でも分かる初心者向けのギリシア神話の本で、周辺の文明の影響を
どのように受けているかがよく分かった。


パンドラの記述では

 ゼウスは人間たちに対してさらに新しい罰を与えようとします。そのために
女性を作ったというのです。それまで人間には男しかいませんでした。ゼウスの
命令で鍛冶屋の神のヘパイストスは土と水をこね合わせて、生命力を吹き込んで、
女神に似た美しい姿の生き物を作りました。しかし泥棒の神でもあるヘルメスは
これまたゼウスの命令で、この美しい生き物に「いやしい犬の心と不誠実な性格」
を入れたというのです。この人類=男を苦しめるためにゼウスが作った「美しい悪」
ギリシア語でカロス・カコンと韻を踏んでいます)には「すべての神々からの
贈り物」という意味のパンドラという名前がつけられ、プロメテウスの弟の
エピメテウスに与えられました。(p45)

というのがある。


なぜ古代ギリシア人はここまで女性を憎んだのか。
「いやしい犬の心」とはどういうことなのか。犬って飼い主に忠実な
生き物のような気がするが、古代ギリシアでは野良犬しかいなかった
のだろうか。


いまでも英語圏でビッチはメス犬と訳されることがあるが、誰とでも
寝るふしだらな女、という意味は古代ギリシアから変わらないのかも
しれない。



ギリシア神話ローマ神話の神々は、自然現象や人間の欲望をキャラクター化
したものだ、という解釈があるそうだが、日本も軍艦や刀剣を擬人化しており、
何千年経ってもそういう行為は変わらない気がする。


いや、むしろ一神教の文化圏はそういうキャラクター化を禁じているのかも
しれない。



本書の終わりの方で、ギリシア神話がモチーフになっているマンガに
聖闘士星矢」と「美少女戦士セーラームーン」が挙げられていたが、
著者の先生にはぜひ「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っている
だろうか?」というラノベおよびアニメをご覧いただきたい。


まさにギリシア神話の神々がキャラクター化されてエンタメ作品に
なっている。
なぜか醜男の鍛冶屋の神ヘパイストスは、この作品では眼帯をした
美女になっているのが面白い。



なお、本書の162ページの最後の行は「パウロ」ではなく「ペテロ」の
間違いではないでしょうか?