
- 作者: 岡田英弘
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/02/01
- メディア: 新書
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読めた。
世界史を履修する前の高校生がざっと読んでおくといいかもしれない。
歴史にロマンティックなものや理想を求める愚を説いているほか、史料の取り扱い方にも注意を
促している。
著者は中国史が専門なので、その分野での語り口は鋭く厳しい。
また、国民国家(nation-state)とはなにか、という話にもページの多くを割いており、まだ200年
ほどしか経っていない制度を当たり前だと思って、それ以前の歴史を見るなよ、と指摘している。
目からウロコである。
ちょっと疑問もある。
どこの国でもそうだが、ことばが開発されるときには、その下敷きになる外国語が必要だ。土着
のことばだけでは、論理をきちんと表現できるようなことばは開発できない。
ラテン語がいい例だ。あれはギリシア語をもとにして、それをイタリアのラティウム地方のこと
ばに置きかえて、開発された。現代のヨーロッパ諸国の国語も、そのラテン語からの直訳によって
開発されたものだ。ことにドイツ語は、ラテン語とは系統の違うゲルマン語系だけれども、16世紀
にマルティン・ルターが『新約聖書』をラテン語から翻訳してから開発されたことばだから、ドイ
ツ語は、語彙から、文法から、細かい表現に至るまで、ラテン語と、まったく一対一にできている。
とあるが、ラテン語のもとになったギリシア語はどこからやってきたのだろう?
もし、ギリシア語が“論理をきちんと表現できる”ことばだとすると、ギリシア語も何か下敷きに
なる外国語が必要だったことになる。
そうすると、論理的な言語の始原とはなにか? という面倒くさい話になりはしないだろうか。
著者はおそらく新書に収めるために話を省略していると思われるが、外国語必要説はちょっと怪し
く感じる。
あと、古代エジプト文明やメソポタミア文明について一切書かれていないのだが、あれは歴史でも
なんでもないのだろうか?
暦も文字もあったんだけど‥‥
とはいえ、大づかみに歴史を把握するにはもってこいなので、学生さんは春休みに一読すればいい
のではないかしら。