「日本人の神」入門

初詣で何となく神社で拝んでいるが、神道について全く知らなかったので
読んでみた。
一回通読しただけでは、ちょっと消化しづらいものがあったけれど、古代
から日本人がどういうものを祀ってきたか、興味深かった。


特に面白かったのは、神道が明治時代から大きく形を変えていくところだった。
江戸時代までは神仏習合で、神社とお寺は大らかに一括りにされていたのに、
明治時代から別々にされ、廃仏毀釈で仏教が迫害されていった。


これらは、つい150年前の出来事で、どうも国家主義的な考え方をする人は、
たいていのことを明治維新を基準に考えているような気がする。
それ以前の歴史については、どう考えているのか。


それから、人を神様として祀る話も面白かった。
菅原道真北野天満宮で祀ったり、徳川家康東照大権現として祀ったり
することはあったが、増えたのは明治時代からだった。
平安神宮明治神宮東郷神社乃木神社などである。
もしかしたら神道政治連盟の野望は、安倍神社みたいなものを新しく作る
ことなのかも。



日本人は自然を神様として祀る風習があって、山そのものをご神体として
拝んでいたり、巨岩に注連縄をつけたりしていた。


こういう素朴な信仰は、たぶん現代にも生きているのではないか。
オタク的に脱線すると、以前「艦これ」で軍艦を女性キャラクターで描く
のはなぜか、という話をしたことがあった。


日本的な信仰心から導くと、まず軍艦に山や川や自然現象の名前をつける
ことは、神から力を授かる、という考えをもとにしていると思われる。


軍艦は、大いなる自然の力と、それを運用する人間を媒介するものである。
それはすなわち、神と人を媒介する巫女にほかならない。


軍艦=巫女という式が成り立つならば、軍艦を女性キャラクター化することに
何の疑問もないだろう。


一方、一神教の世界では自然そのものを崇拝することはない。
近代の軍艦は人間が運用するものだから、平気で偉人や政治家の名前をつけ
られるのである。
戦争はあくまで合理的に行うもので、神頼みではない。
そういうリアリティがあるのではなかろうか。



「日本人の神」入門を読むと、原武史の「知の訓練」を思い出した。

知の訓練 日本にとって政治とは何か (新潮新書)

知の訓練 日本にとって政治とは何か (新潮新書)

できれば、島田裕巳原武史の対談本を読んでみたいのだが、そういう企画は
ないのだろうか。


ググると、2015年11月15日に朝日カルチャーセンター横浜教室で対談している
ようだ。
どんな内容だったのか気になる。