ギターメーカーのギブソンが破産申告をしたそうで、今日の山下達郎のサンデー
ソングブックは「ギブソン・ギターで棚からひとつかみ」だった。


ギブソンが破産したのは、買収した音響メーカーの業績が悪かったせいで、
ギター関連は黒字だったのだそうだ。
それでも米国市場ではエレキギターの売れ行きが右肩下がりらしい。
若者がエレキギターを手に取らなくなったのだそうだ。



エレキギターはロックンロールに無くてはならない楽器である。
そしてロックンロールは若者の反抗のための音楽だった。
50年前に若者だった人が、現在でもエレキギターで演奏しているのは、
カウンターカルチャーが成熟してカウンターでなくなったことを意味
しているのだろう。


それでも、出自のせいかエレキギターは今でも反体制・反権力の臭いが
かすかにする。
旧ソ連などの共産圏では、ロックは退廃的な西洋文化の象徴であり、
大っぴらに聴くことは禁じられていた。人々は海賊版などでこっそり
楽しんでいた。


では、自由化が進んだロシアや東欧では、エレキギターが売れている
かというと、たぶんそれほどでもないだろう。
ソ連が崩壊した時期は、英米のポピュラー音楽も変わりつつあった
からだ。


現在、欧米のポピュラー音楽を大っぴらに聴けないのは、中東の国々
ぐらいだと思うが、彼らが欧米の音楽に飢えているというわけでも
なさそうだ。



中国はどうなのだろう? 


ググると2010年ごろラオックスが上海にエレキギターの店を出した、
というのが引っかかったが、ネットの情報を見たところ、爆発的に
売れていることはなさそうだった。


ギブソンフェンダーのコピー商品は出回っているようだが、これは
主に輸出向けのようで、国内向けではなさそうだ。


何の根拠もないが、中国の若者はあまりエレキギターを手にすることは
ないようである。
中国のヒットチャートを検索して10秒ぐらい視聴できるのを聞いてみると、
ヒップホップ系の今風の曲が売れているようだ。
あるいは映画スターの歌ものが多い。


いかにもロックンロール的なバンドサウンドがないのは、単に中国人の
若者が、いま流行している音楽をやっているからだと思う。


まさか中国共産党も、エレキギターを手にした若者が反体制に直結する
と考えているわけではなさそうだが、もしかしたら規制をかけているの
だろうか。



若者が多く中間層が形成されている国なら、エレキギターの売れ行きも
伸びるのではないか、と考えたが、若者が憧れる音楽が変化すると、別に
ギターでなくてもいいということになる。


ギブソンの破産申告は、ロックミュージックの終焉の始まりなのかも
しれない。


では中国やインドのような成長している国から、何か新しい若者文化が
現れて世界的に流行するのだろうか。
私は否定的だが、未来はどうなるか分からない。
思いもしない地域からビートルズのような大スターが登場するかもしれない。



21世紀に世界中で大流行する若者文化が現れないならば、それは人類の
青年期が終わってしまったことを意味するのではなかろうか。