ザ・万字固め

ザ・万字固め (文春文庫)

ザ・万字固め (文春文庫)

万城目学のエッセイ集第二弾。面白かった。
前にチラッと読んでいた、静岡県のうなぎ屋の話が収録されており、再読できて
嬉しかった。


それから、2010年12月に購入し、2011年3月31日に売却した東京電力の株の話。
株主総会に出席したレポートも収録されていた。文藝春秋に載っていたやつだ。
静かな怒りがみなぎっており、震災を忘れかけた今こそ読むべきかと思った。


他にも2014年サッカーワールドカップの日本チームの戦いぶりを冷徹に記した
コラムや、森見登美彦綿矢りさとの鼎談もあり、バラエティに富んでいる。
万城目学ファンならずとも読んでほしい一冊だ。



残念なのは、本人が年齢を重ねたため、もう大学生ものは書けない、と言っている
ことである。
私は「ホルモーもの」をもっと書いてほしいと思っていたので、がっかりした。
同志社大学が参戦する話はみんな読みたいのではなかろうか。


まあ、作者が大学生のリアリティを求める以上、周りがどうこう言ってもしょうが
ないのかもしれないが、我々が読みたいのはあくまでホルモーの物語であって、
別に大学生が今どきの描写をされているかどうかは関係ないと思う。


だって、週刊少年マンガ誌の読者は少年だけど、描いているのはほとんど中年で
ある。じゃあ、彼らが描くマンガに今どきの少年っぽさがないからつまらないか
と言えばそんなことはないわけで、表層的なものを読者は求めていないと思うの
だが、どうだろうか。


万城目学の気が変わるまで、私はじっと待っていることにしよう。