ぼくらの近代建築デラックス!

何となく手にとって読んでみたら面白かった。
明治時代以降に作られ現存している建物で、著者が興味のあるものを
ピックアップして実際に訪れて感想を言う、という内容だ。


私は建築にほぼ興味がないのだが、さすがに東京駅を辰野金吾が作ったこと
ぐらいは知っている。
万城目学も最初はそのくらいの知識だったのが、門井慶喜という先生を得て
みるみる賢くなっていく。
恐るべき学習能力である。面白い話を引き出す能力に長けているというか。

いわゆる歌があり、歌手があり、その向こうに作詞家の阿久悠がいるわけですけれど、
普通のちびっ子は、阿久悠なんて知らないわけですよ(笑)。それと同じで、建築家で
近代建築を楽しむというのは、けっこうハードルが高いことだと思います。でも、あるとき、
この曲もあの曲も阿久悠がつくっていたことに気づく日がくる。近代建築の向こうに、
やたら同じ名前が登場することに気づくように。
(p234)

と語っているが、これは山下達郎が中学生のとき、自分が好きな曲のドラマーが
全部ハル・ブレインだったと気づくエピソードと同じである。
一芸に秀でている人は、こういうことを発見して、それを突き詰めていくことが
できるのだろう。



松山で近代建築といえば愛媛県庁本館だ。
Wikipedia を見ると木子七郎という人の設計になっている。萬翠荘もそうだ。
どういう人だったのかは書かれていないので、ぜひ門井慶喜に解説してほしいものだ。


愛媛県丹下健三ゆかりの地でもあるので、そこそこ彼が設計した建物もある。
もう取り壊されてしまったが、堀之内にあった県民館もそうだった。
天井に何かたくさんぶら下がっていたのを憶えているが、あれは何だったの
だろうか。


ひめぎんホール丹下健三の設計で、音響が悪いという評判である。
しかし、丹下健三は本書で紹介されている近代建築に入るかどうかは微妙な
気がする。