- 作者: 森山高至
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/02/18
- メディア: 新書
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ブログを見に行ったら、なぜザハの設計では無理なのか分かりやすく解説してあった。
その人が、現在の建設業界の抱える問題を「どや建築」というキーワードで明らかに
しており、面白かった。
が、どうやら建設業界の人からは裏切り者扱いされているらしく、私のような素人から
すると、著者の方が常識的だと思うので闇は深そうである。
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巨大なビルや公共施設もそうだが、マンションや一戸建ての家にしても、普通の人が
建設に関わることは一生に一度あるかないかだろう。
だから、使う立場になってみて、この建物は失敗だった、と思っても、もう手遅れだし、
ユーザーの不満は市場に反映されない。
ここが建設業界の閉鎖性の原因のひとつなのだろう。
本書でも、ガラス張りの建物にしたら、夏は暑く夜になって虫が飛んできて対処に困った
例が紹介されていた。
だが、苦情の多い建物を設計した人が市場で淘汰されることはない。
トヨタがバブル期に作ったセラというガラス面の広いクルマがあったが、夏は車内が
サウナになったそうで、好きな人は好きだが、早々に市場から撤退した。
自動車も高い消費財ではあるが、ダメなものはダメという評価はきちんと下される。
トヨタも、二度とこういうクルマは作っていない(と思う)。
なので、公共施設やビルを利用する我々も、ひどい使い心地のときは設計者を明らかに
させて、二度とこいつを使うな、と圧力をかけてもいいはずである。
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しかし、原子力ムラと同様に、土建業界も利権ががっちり政治と組み合っているので、
一般の人とは関係なく、これからも壊しては作ることが繰り返されるのだろう。
もしかしたら著者が指摘するように、ゼネコンが持っていた現場の暗黙知が派遣業に
よって失われてしまい、自壊する可能性の方が高いかもしれない。
なぜ派遣業が、と思われた方は本書を読んでいただきたい。
2020年の東京オリンピックに向けて特需があると思うが、それを過ぎたらどうなるのか、
ちょっと恐ろしい気がする。
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多くの人が指摘していると思うが念のため。
p79 8行目「それらはモダニズム建築と呼ばれ、」トルツメ
p95 6行目 新たな読解の方法論を指し示す「」でも偉大な建築家と認めていいのだ、
「」内に人あるいは者を挿入