
- 作者: 養老孟司
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2015/06/16
- メディア: 新書
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本人が決めているわけではないのだろうけど、そろそろ止めたらどうか。
この本は、理系の人との普通の対談集である。
私が面白いと思ったのは、養老孟司がノーベル賞について述べたところだ。
養老
そうですね。でも科学の中でいうと、ノーベル賞はマイナス面が大きいと思います。
アメリカでノーベル賞クラスのしごとをした日本人は少なくないですが、実際に受賞
するのは彼らのボスですからね。科学の社会にはそういうヒエラルキーがある。
さらに大きな問題点は、受賞に政治的判断がはたらいてることです。最近、日本人に
多く授賞しているのは、たぶん、日本は科学技術にお金を出せる余力があるだろうから、
日本にやらせておけということじゃないかな。
須田
ああー、なるほど。
養老
しかも、去年の青色LEDが典型的ですが、授賞対象が応用研究にシフトしてきた。
ノーベル賞はもともと、アインシュタインみたいな基礎研究にしか賞を出さなかった
んです。青色LEDは、実用面を重視する京都賞のほうがふさわしい。
僕は、京都賞のレベルが上がってきたから、ノーベル賞が方針転換をしたんだろうと
思ってます。島津製作所の田中耕一さん以来、急に変わった。悪く言えば、京都賞潰し
ですよ。「科学に関する価値観を決めるのはわれわれだ。日本にはその権利を渡さない」
ということです。
(p179 - p180)
ノーベル賞ばかり持ち上げないで、京都賞をもっと盛り上げたほうがいいのかも。
↓
私が理系の人を観察してみるに、彼らの多くは歴史が嫌いである。
文系は数学がとにかく苦手で、その延長上にある物理や化学も理解できない人が多い。
これは好き嫌いというより、分からないと言ったほうがいい。
が、理系の歴史嫌いは、分からないのではなく、無意味だと感じているのである。
つまり、こまごまとした政治とか文化の変遷には、物理の公式のようなものがなく、
いちいち個別に記憶しなければならない。
あらゆる変数を呑み込んでビシッと答が出る快感がないのである。たぶん。
文系からみれば、そのこまごましたところが面白いと思うのだが、人間の思惑や偶然に
よってできたものを恣意的にまとめる、ということに胡散臭さを感じるのだろう。
↓
養老孟司が本書で、理系にもフィールド系と実験室系があって、フィールド系の方が
面白いのではないか、と言っている。
で、歴史が嫌いな人は、おそらく実験室系のサイエンスが好きなのだと思う。
すでに誰かが、複雑系からみた歴史、みたいなものを研究して本にしているような
気がするが、それが学校教育に反映されれば、歴史嫌いの理系も減るかもしれない。