遺言。

遺言。 (新潮新書)

遺言。 (新潮新書)

自然にあるものはリンゴひとつとっても全て違うものだが、人間の脳はそれを
同じものにしようとする。その「同じ」が言語や貨幣を生み出したもとである、
という話だった。


養老孟司は、基本的には「唯脳論」あたりからずっと変わらない話をしていて、
この本もそうだが、「バカの壁」があれほど売れても、彼の考え方は世間に
届いていないのだなぁ、と思う。


たぶん理系が哲学を語っても文系に黙殺されてしまう好例なのだろう。



この本には書いてないが、養老孟司が言ったことで面白かったのは、限界集落
話である。
老人ばかりになってしまい、やがて人がいなくなるであろう場所があるが、彼は
「数百年ぶりに日本にフロンティアができるのだからいいことでもある」と言う。


人口が減少しているので、無人になったところに再び人が住み着く可能性は低いと
思うのだが、平成生まれの若者がフロンティアを再開拓するのも面白いかもしれ
ない。


ちょうどネットで、帰省したら田舎のオッサンにひどいことを言われた話が流れて
きたけど、そんな人ばかりが田舎にいるとするなら、どんどん滅びていってほしい
ものである。