ラノベにおける接続助詞「し」の使い方について


接続助詞「し」は並列や理由を表すものだそうだ。
並列)お金もある、時間もある。
理由)お金もある、行ってみよう。


ところが、ラノベを読んでいると、どうもそれとは違うような使い方がある。
読者層である若者の言葉使いを採り入れたからだと思うが、関東地方の言葉
なのか、全国的に広がっているのか、よく分からない。


用例を挙げてみよう。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」第7巻144ページ13行目

「勝手に先、行くな!」

これは命令形+「し」である。
他にも、正確な引用箇所が分からないので記憶だけで記載するが

「偽装しろ

というのがあった。


この方のブログ
http://nando.seesaa.net/article/133671622.html
によれば、意味を曖昧にする表現だということで、私もそうではないかと思う。
「行くな」や「偽装しろ」で言い切らずに、柔らかい感じを残したかった
のではないか。


ただ、通常なら「よ」を使うところだが、なぜ「し」なのかは分からない。
上記のセリフは女性が言っており、「行くなよ」とか「偽装しろよ」だと
あまりに男っぽいから、敢えて「し」にしているのかもしれない。


もう一つの可能性は、京都弁の「よし」の変形である。
共通語)ちょっと待ちなさい
京都弁)ちょっと待ちよし
と「〜しなさい」という軽い命令形で使われる「よし」が、どういうわけか
現代の若者言葉に流入したということは考えられないだろうか。
考えられないですね。失礼しました。



もう一つの「し」の用例。


同じく「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」第9巻44ページ6行目

「なんで先行っちゃう!?」


これは普通なら「の」を使うところに「し」が入っている。
「なんで先行っちゃうの!?」
でもほぼ同じ意味で使えるのに、なぜ「し」なのか。


やはり表現をぼやかせるためだろうか。
「の」だと詰問するようなニュアンスが加わるが、「し」だとそこまで鋭く
ならない。


むしろ、発生した結果は覆らないのを認めつつ自分の不満を伝える、ぐらいの
トーンにならないだろうか。


ただ、通常は否定形+「し」の口語表現の方が多く使われていると思われる。
例)あたし悪くないし!
  そんなこと、やってないし!


口ごたえするときに使う表現で、かなりきつい言い方である。
そしてこの「し」は「から」でも置き換え可能である。
ということは、「先行っちゃうし」とは違う分類になるのか。


専門家でないと分からない話になってしまったが、果たしてこの「し」の使い方は
日本語に定着するのかどうか、見守りたい。