やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。10.5 (ガガガ文庫)
- 作者: 渡航,ぽんかん(8)
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/03/18
- メディア: 文庫
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読んだ。その予想どおり、フリーペーパーを作るだけの話だった。
だが面白い。
基本的に主人公とヒロインたちだけで展開されるのに、最後まで
ちゃんと読ませるのは、キャラがしっかりしているのと、構成力が
あるからだろう。
ただ、奉仕部全員で初めて自分たちの写真を撮った場面があって、
それを描写する言葉がビターエンドを予感させる。
.5巻は息抜きステージではあるが、11巻への布石は打っている
ようだ。
主人公は、高校2年の冬にいるのだが、ときおり大学を卒業して
働くようになってからの視点が混じっているような気がする。
もちろん、それは作者の視点でもあるのだが、青春は永遠では
ないという、当事者はあまり気が付かないことに気が付いて
しまっているあたりが、今どきの世代なのかな、とも思う。
世代といえば、平塚先生が藁半紙とガリ版と言ったとき、生徒たちが
理解できなかったのが面白かった。
でも、実際に何歳くらいまで藁半紙とガリ版を現実に知っているの
だろうか。
私は鉄筆でガリ版を切ったことがあるのだが。
↓
読売新聞主催で「SUGOI JAPAN」という企画があり、そのラノベ部門で
「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」が1位に選ばれた。
こういう投票ものは作品を正しく反映しないと思っているのだが、
1位になったのは素直にうれしい。
でも、ここまでビッグタイトルになってしまうと、作者のプレッシャーは
いかばかりか、とも思う。
それに、版元もさっさと完結されては商売上がったりだから、なるべく
引き延ばそうとするだろう。
(なので .5巻が出る)
作者はそのあたりの機微を分かっていると思うので、人気のあるうちに
できるだけ早く物語を終わらせようとするだろう。
ただ、「クズと金貨のクオリディア」を読む限り、渡航という作家が
全く違う作品を生み出せるかというと、不安が残る。
できれば大学生が就活で苦労するような話を読んでみたいのだが、
それを受け入れる媒体があるだろうか。
ラノベは主に中学・高校生が主人公なので、読者層から離れるような
気がする。
もしかしたら、少年マンガから青年マンガへとジャンルが成長して
いくように、中高生向けのラノベから大学生・社会人向けのラノベ
というものが生まれるのかもしれない。
私の根拠のない勘にすぎないが、渡航は大学生・社会人向けのラノベ
でこそ面白い作品が書けるのではないか、と思う。
そういう媒体を用意するのは、大手出版社の仕事だろう。