やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。9巻

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。9 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。9 (ガガガ文庫)

原理的なことを言うと、コミュニケーション能力というのは
「円滑にコミュニケーションを進める力」のことではなく、
「コミュニケーション失調に陥った状態から立ち直る能力」、
「中断している回路を開通させる能力」のことである。
コミュニケーション不全を「治療する能力」と言ってもよい。
                                  内田樹

私は8巻を読んで、奉仕部の関係は崩壊していくと予想していたが、
見事に間違っていた。


それは、主人公が変化したからである。
8巻までは「ぼっち最高」と考えていたのに、9巻になって
「本物の関係がほしい」と言うようになった。


これを主人公の成長とみるか、作者の裏切りとみるかは、読者に
よって違うだろう。
私は成長とみる。青春小説はそういうものだからである。



ただ、他人の考えていることは分からない、という原則がある
せいか、登場人物たちの気持ちが非常にあいまいに描写されて
いて、読んでいて分からなくなるところがある。


つまり、読者も他人のひとりなのだから、登場人物の内面は
分からない、ということだろう。
そこがフェアでないと感じる人は、この作品をあまり評価しない
のではないか。



7巻の終わりぐらいから続いていたモヤモヤが、9巻の終わりぐらいで
ようやく晴れてきた印象がある。
ラノベ作家としては立ち入ってはいけない領域でもがいていたのが、
なんとか風呂敷をたたむところまで辿り着いた、みたいな。
(みんなでデスティニーランドに行くエピソードから、急に正調ラノベ
戻ったような気がする)



次巻では、葉山くんが悪い方向に行く伏線があったし、雪ノ下陽乃
暗躍するのではないか。
アニメ2期も決まったし、続きを楽しみに待っていよう。