Boaz2014-06-08

アニメ「魔法科高校の劣等生」第9話を見ていないと分からない話。


見ている人だけに分かってほしいので詳しい説明は省く。
廊下で主人公と妹が、父親と執事にばったり会う場面である。


ここで執事は妹だけに挨拶をして、主人公を無視する。
それに怒った妹が無礼だと言うと、執事は主人公を鼻であしらう。
カッとなった妹を押しとどめ、主人公は執事に反駁し、やり込めてしまう。


こういう出来事が描かれていた。
私が不思議だったのは、老獪な執事が、なぜわざわざ次期当主と目される
妹を怒らせるようなことをするか、ということだ。


もし妹に取り入りたいのなら、むしろ妹が大好きなお兄さまを持ち上げる
べきだろう。そういう心が見透かされていたとしても、無視するよりは
ましである。



では、なぜこのような場面を作ったか。
それは、お兄さまのすごさを、読者を含めた周りにアピールするためである。
つまり、老獪な執事をロジックでねじ伏せるお兄さま格好いい! と読者に
思わせればそれでいいのだ。


ラノベは読んでいないのだが、アニメだけを見ると、基本的に主人公には
葛藤がない。神様が下界に降りて、人間と一緒に遊んでいるようだ。
この全能感を主人公と一体化して楽しむのが、この作品の正しい鑑賞方法だろう。


なので、あらゆる出来事は最終的に、お兄さま素敵! と周りの人に言わせる
ことを目的として作劇されている。
まさに中学生の夢の世界である。



こういうパターンの映画をどっかで見たぞ、と考えたら「金日成のパレード」を
思い出した。若いときから超人的な能力を持っていたとされる金日成を褒め称える
プロパガンダ映画である。

金日成のパレード [DVD]

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ということは「魔法科高校の劣等生」の主人公に政治的野心があれば、きっと
独裁者になる、と考えられる。
アニメを見る限りでは、どうやらそんな野望はなく、裏の世界で生きていく
つもりみたいだが……


なんと言えばいいんだろう、話は面白いので毎週楽しみにしているのだが、
そこに透けて見える思想に首を傾げてしまう作品である。