エロマンガ・スタディーズ

宝島社的なサブカル臭のきつい書き方なので、最初はウッとなるかもしれないが、
エロマンガの通史としては貴重なものだと思う。
これだけ網羅しているのはすごい。


普通はエロマンガなんて、自分の好みのものだけを読むもので、嫌いなものや
ジャンルの違うものは記憶にも残らないはずだ。
この本の筆者も、エロマンガの書評という難儀な仕事をしなければ、こういう
ものを残せなかっただろう。


読み通すと、自分の好みではないエロマンガでも、ちょっと読んでみようかな、
と思うものが必ずあるはずである。
そういう力がこの本にはあると思う。



日本のエロマンガは、表現の多様さにおいて世界一だと思う。
(もともと江戸時代の春画からの伝統もあるだろう)
かなりニッチな欲望も、たぶん誰かがマンガにしている。
それがわりと手軽に読める環境にあるのは、人類史上なかなかないことでは
あるまいか。


外国のエロマンガはどうなのか、詳しい人がいたら教えていただきたい。
たぶん、アンダーグラウンドでしか流通していないだろうし、そもそもポルノを
マンガで表現している文化圏が広まっているのかも疑問だ。


その日本で、表現の規制をしようとしているのは許せない話である。
被害者が存在する児童ポルノは全滅すべきだが、マンガやアニメを規制するのは
根拠がないのだ。


規制派は、主観的には清く正しいと思っているだろうが、実際は自分の言う通りに
ならないと不機嫌になる、幼稚な権力者である。
そんな奴らに屈してはならない。



この本では、エロマンガのどういうジャンルが発展していったか、という流れで
まとめられている。


実は私がもっと興味があるのは、どういう表現がいつ誰によって発明されて、
普通にみんなが使うテクニックになっていったか、という技術史である。


一般的なマンガの技術史も知りたいが、エロマンガは特にそのテクニックが
広まりやすいのではないかと思う。
これは編集者ではなく、実際にマンガを描いている人がよく分かるのではないか。
誰か調べてくれたらいいのだが。


ちなみにポピュラー音楽における技術史というのはあるのですかね? 
あのリフは誰が考えていつからみんなが使うようになったのか、とか、そういう
歴史を勉強してみたいのだが。
菊地成孔あたりがやっているのかな。