いま読んでいる本で気になる考え方があった。
この本だけでなく、多くのインテリが同じような考えを持っていると
思うが、誰もあまり気にしていないようだ。
それは、人間は勉強したら賢くなる、という思想である。
当たり前ではないか、と思われるかもしれないが、その「賢さ」は
どのレベルまでいけばいいのだろうか?
まさかインテリたちのような、旧帝大の大学院レベルではなかろう。
私が田舎の学習塾で教えた経験では、普通の子は中学校の内容を
6割ぐらいクリアできれば上々である。
平均して5割から6割の間というのが実感で、これをいかに引き上げる
か、という問題になってくる。
勉強できない子は4割理解できればいい方で、彼らは勉強したからと
いってすぐに賢くならない。残念ながら。
今の世の中は、普通の人でも簡単に転落して生活基盤が危うくなる。
だから教育によって専門知識を身に着けて、競争社会でも生きていけ
るようにしなければならない、とインテリは言う。
それはそのとおりだが、地頭の限界というものはあるのだ。
最も多い普通の人が全体的に賢くなるのは非常に難しい。
インテリたちは、自分ができたのだから普通の人だってできるはず、
と考えているかもしれないが、それは人間を理想的なモデルとして
扱っている経済学と同じ陥穽にはまっている。
ともあれ、現代の閉塞感を乗り越えるには、どうしても普通の人が
ちょっとだけ賢くなることが必要で、それにはいまの教育方法を
いろいろ変えて、地道に時間をかけてやるしかない。
こんなことは何十年も前から考えられており、いまだに成果があら
われていないということは、何かが間違っているのだろう。