世界は分けてもわからない

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

世界は分けてもわからない (講談社現代新書)

講談社現代新書では2冊目になる分子生物学の本である。
前作の「生物と無生物のあいだ」もそうだったが、この本も理系の
内容なのに文学的で、進学校の夏休みの課題図書にちょうどいいの
ではないかと思う。


今回はアミノ酸酵素の話だが、そこにもっていくまでの挿話が
面白くて、ついつい読み進んでしまった。


後半の、がん細胞とATP分解酵素の関係の話は、ところどころ分から
ないところがでてきて、文系頭ではついていけないところもあった。
それでも、ミステリ小説のごとく、あっというオチがついていたの
で、細かいところを理解できなくてもいいのか、と納得した。


福岡ハカセが繰り返し書いているのは、ポスドクという研究者の卵
の奴隷っぷりである。


世界的に有名な科学者のもとには、研究でひと山当てようという優
秀な若者が集まる。
そこでは、地味な実験が繰り返され、外国から来たものは慣れない
言語や生活習慣に参ってしまう人もいる。


学歴からすれば信じられないような扱いだけれど、研究というのは
そういうものなのだろう。
ひたすら実験、実験、実験である。体力勝負だ。


私がかねて不思議に思っているのは、実験用器具の発展である。
遠心分離機であったりフラスコを振る機械だったり、実験を楽にす
るために発明されたものだと思う。


それは、誰がどの会社に発注するものなのか。
イデアを出せば、たいていの実験用器具を作ってくれるのか。
たぶん素人が見ても分からないカタログがあると思うのだが、どう
いうメーカーがあるのか。


こういうのを文系にも分かるように解説した本があると面白いと思
うのだが、誰か作ってくれないだろうか。