指揮者のオーラ

今日やっていた「BSマンガ夜話」の“のだめカンタービレ”で、指揮者によってオケの音が
全く違う、という話題があった。
これは本当である。


といっても、管弦楽ではなく吹奏楽(しかも高校生)の話だが、いまだにその感覚は忘れられ
ない。


私がいた吹奏楽部で、シュトラウスの“こうもり男爵”序曲をやることになった。
もともと管弦楽のために書かれた曲なので、弦楽器のない吹奏楽用に編曲する必要がある。
それをやったのが、他の高校で音楽教師をしているN先生だった。


私たちはその吹奏楽用の譜面を手に入れ、毎日練習していた。
顧問のY先生は音楽教師で、熱心に指導してくれていたのだが、いかんせんカリスマ性とい
うかオーラがなかった。


しかも、生徒がひどい音を出したり間違えたりすると、ときどき譜面台を叩きつけて怒り、
音楽準備室に引っ込んでしまうことがあった。
オロオロした私たちは、パートリーダーが集まって集団で謝りに行ったものだった。


さて、夏休みのある日、“こうもり男爵”を編曲したN先生が、わざわざ我が高校に来てく
れることになった。自分が編曲した楽譜で練習しているのが嬉しかったのだろう。
あろうことか、指揮までしてくれるという。


N先生が指揮台に立ったとき、なんというか空気が変わった。
全体が一ヶ所にぐっと引き込まれるというか、熱い何かが放射されているというか、とにか
く顧問のY先生からは全く感じられなかった何かが出ているのである。


そのとき演奏した“こうもり男爵”序曲は、私たちにしては最高の出来だった。
技術的なことはともかく、グルーヴが全く違ったのだ。
全体が一つにまとまったあの感覚は、おそらくN先生が指揮しないと出せなかったに違いな
い。
演奏が終わった後、私たちはお互いの顔を見合わせて感動を分かち合ったものである。


ただ、いかに素晴らしかったかを言えば言うほど、顧問のY先生の立場はなくなるわけで、
さすがに私たちも空気を読んで、あからさまに感激することはなかった。
だが、演奏を聴いていたY先生は、全てわかっていたと思う。


このようなことは、オーケストラの指揮に限らず、いろんなところであるもので、例えば
塾の講師だって、教える人が違えば、同じ生徒の教室でも雰囲気はガラッと変わる。
会社の上司が変わると、その部署の雰囲気も変わることはよくあるだろう。


そのようなオーラを持った人はあまり多くない。
私が思うに、オレ様度が高い人ほど、他人の集中力を一気にコントロールできるのではな
かろうか。自分に対する過剰な自信が他人に伝播して、本人も未知の力を出させるのでは
ないかと思っている。


なので、オーラのある人の仕事は素晴らしいかもしれないが、個人的には付き合いたくな
い。きっと“のだめカンタービレ”に登場するシュトレーゼマンのような人が多いだろう
から。
(ただし“こうもり男爵”を編曲したN先生がそのような人かどうかは知らない)


本文と写真はまったく関係ありません

アイドルもリーダーが誰かで雰囲気が変わりますね