イヤハヤ南友

永井豪が天才であることは、いまさら私が言うまでもないだろう。
中学生のときに「おいら女蛮」を読んだときの衝撃は忘れられない。
いまの30代後半ぐらいの男性が、永井豪のマンガで性的な何かを受け取ったと思う。


オッサンになって読み返してみると、よくこれが週刊少年マガジンで連載できたなぁ、と感心
する。このくらいアナーキーな作品が掲載されたということで、いかに当時のマンガに勢いが
あったかが分かる。
たぶんテレビ番組も同様で、いろんなところからクレームが入ったりすると、どんどんつまら
なくなってしまうのだろう。


物語は、大金持ちの家早(いやはや)家が、もうひとつの大金持ちの果扨(はてさて)家と戦
う話である。最初の方は学園ものみたいなギャグっぽいストーリーだったのだが、中盤から対
決がエスカレートしていく。


家早家にはイヤハヤ十人衆というスケバンを集めたグループがおり、彼女たちが果扨家の刺客
と勝負するのだが、ここがエロい。
例えば、十人衆のひとり、弁天ユリはこんな感じ。

彼女は自分の胸にプラスチック爆弾を装着しており、乳首が信管になっているという設定だ。
そして、腹にある弁天様の刺青をこすると、弁天様が抜け出して命令をきいてくれる。


また、同じく十人衆のひとり、万華鏡子は乳首から特殊な液体を出し、その液体を通して遠く
のものを見ることができる。

ちなみに、上記のふたりとも中学生という設定である。けしからん。(←?)


扶桑社版の文庫本でいうと、2巻の後半から5巻の前半にかけて壮絶な対決が繰り広げられるの
だが、私がこんなの描いて大丈夫だったのか、と思ったのは、スカトロ対決である。


腐ったものを食べて、どちらが早く腹を下すか、という何ともバカらしい対決だが、家早家は
分津マリイ(ふんづまりい)という美少女、果扨家はオモライくんという永井豪の別の作品の
主人公が登場する。


分津マリイは5年間便秘しているという設定で、何を食べても大丈夫だ。
一方、オモライくんも乞食なので腐ったものが大好きである。
これでは埒が明かないため、浣腸することになる。
(いまや少年マンガで女の子に浣腸なんてできますか?)


ところが、便が固まって刺さらないために、ドリルで穴を開けるんですね(なに書いてんだろう、
俺‥‥)。それがこの場面。


それでですね、とうとう浣腸液が体内に入ったところ、恐ろしいことに5年分の便が爆発的に出
てくるのですよ。
たぶん、小学生の読者は痙攣するほど笑ったんじゃないかな。

すごいでしょ。体育館がウンコでいっぱいになるんですよ? 


この後もエロエロ対決があるのだが、物語は妙に急ぎ始め、ついに家早家と果扨家が本当に戦争
を始めてしまう。なんか「ハレンチ学園」の最後と同じような感じだ。
連載は74年から76年までなので、冷戦の真っ只中である。
米ソの対決が少年マンガに影響を及ぼしていた、というのは言いすぎだろうか。


最後はアッと驚くような結末になっており、主人公の少年の正体も明らかになる。
デビルマン」と対になった作品と考えてもいいかもしれない。
ま、そんなことより、脂の乗り切った永井豪のエロいペンタッチを堪能するのが一番だけどね。


いま、この傑作が手に入りにくい状態なのがもどかしい。
なんとか再販してもらえないものだろうか。