山清の鬼からし

友だちと郊外の道を歩いていると、電柱に黄色い看板があって<山清の鬼からし>と
あった。子供のころからよく見ている広告だ。


この鬼からしの看板を見ると、風邪をひいた夜のことを思い出す。
私の母親は、かなり愚かな人間で、いま考えるとどうか思われると民間療法を試みていた。


1.鬼からし(粉末)を水で溶いてペースト状にする
2.半紙に塗って、その上に半紙をのせて鬼からしを挟む
3.胸に貼る
4.鬼からしの作用によって発汗が促され、熱が下がる(←?)


というものだった。
私は鼻にツンとくる鬼からしの匂いに顔をしかめながらも、しだいに胸が熱くなっていく
のを感じながら横になっていた。
当時は素直な子供だったので、これで病気が治るんだ、と信じ込んでいた。


数時間後に半紙をはがすと、その部分だけ赤くなっている。
それから眠る。果たしてそれで風邪が治ったのかどうか、今となっては検証できない。


ただ、私の母親は、私が病気になると非常に機嫌が悪くなるので、よほどのことがない
限り、頭が痛いとかお腹が痛いとは言えなかった。
病気になるのは、私が不注意だからなるのだ、といつも言われていた。
だから、寝込んでいるときは、親に迷惑をかけているという罪悪感があった。


私が風邪をひいたかな、と思ってバファリンなどの解熱剤や、パブロンなどの風邪薬を
飲むようになったのは、社会人になって自分で薬を買うようになってからだ。
それまでは、正露丸ぐらいしか飲み薬はなかった。
今ではキャベジンバファリンは常備薬である。


東京にいるときは、さすがに山清の鬼からしの看板を見ることはなかったが、松山では
よく見るとけっこうある。どこの会社だろう、と調べたら、香川県だった。(参照)
なるほど。
どうでもいいが、このパッケージのデザインは、子供心にもかなり怖いものだと思った。