著者には大変失礼ながら、ポル・ポトってこんな感じだったんだ
ろうな、と思ってしまった。
おそらく著者の理想とする社会は、「未来少年コナン」のハイ
ハーバーみたいなものだと思う。
安定した生活を獲得することで、相互扶助への余裕が生まれ、
消費主義的ではない活動への余地が生まれるはずだ。スポーツを
したり、ハイキングや園芸などで自然に触れたりする機会を増やす
ことができる。ギターを弾いたり、絵を描いたり、読書する余裕も
生まれる。自ら厨房に立ち、家族や友人と食事をしながら、会話を
楽しむこともできるようになるだろう。ボランティア活動や政治
活動をする余裕も生まれる。消費する化石燃料エネルギーは減るが、
コミュニティの社会的・文化的エネルギーは増大していく。
毎朝満員電車に詰め込まれ、コンビニの弁当やカップ麺を
パソコンの前で食べながら、連日長時間働く生活に比べれば、
はるかに豊かな人生だ。そのストレスを、オンライン・ショッピングや
高濃度のアルコール飲料で解消しなくてもいい。自炊や運動の
時間が取れるようになれば、健康状態も大幅に改善するに違いない。
(p267)
本書ではこのように書いてあるが、この社会にはたぶんエロ本は
ないのである。
みんなが健康で頭のいい集団が前提で語られているのが、私には
怖い。身障者にはやさしいが、怠け者は許されないだろうから。
宮崎駿もそのあたりを考えて、オーロのような無法者をハイハーバーの
郊外に置いたのだろう。
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著者は、気候変動で明日にも人類が滅びるようなトーンで語っている。
これは右翼が、人民解放軍が明日にも日本を攻めてくると言っている
のと同じではなかろうか。
最悪の結果そうなるかもしれないが、オオカミ少年のような気も
しないではない。
アル・ゴアの「不都合な真実」では2020年にはキリマンジャロの雪は
なくなっていると言っていたが、実際にはそうなっていない、という
のを読んだことがある。
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だからといって、このままの生活を続けていいとも思っていない。
平凡な人間は、ラディカルな革命は非現実的だけれど、自分だけが
豊かであればいいと思っているわけでもないはずだ。
過剰に危機感を煽ることなく、著者のいう帝国的生活様式をスロー
ダウンさせるのが現実解ではなかろうか。
それに、帝国的生活様式を送っている人はすでにひとつの答を
出しつつある。それが少子化だ。
豊かな社会の人口が減ることは、著者にとっては良いことでは
なかろうか。
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人新世という言葉は、中新世とか更新世という区分と同じスケールで
名付けたものだろう。
だとしたら人類はやがて滅びることも織り込んでいるのではなかろうか。
生物の大量絶滅は少なくとも5回はあったそうだから、人類も例外では
あるまい。
そういうマクロの話をしているのではない、と言われるだろうが、
ならば人新世などという大げさな言葉を使うべきではなかろう。
何度も言うが、いたずらに危機感を煽るのはよくない。
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とりあえず私は資本主義と決別すべく、働くのをやめて引きこもる
ことを続けよう。