
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/10/18
- メディア: 文庫
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「舟を編む」とか「風が強く吹いている」が“白しをん”だとしたら、
本作は“黒しをん”が執筆している。
純文学寄りの小説は“黒しをん”のことが多い気がする。
三浦しをんはこの小説で、自分の中にある宗教的なものをえぐり
出したかったのではなかろうか。
たしかキリスト教系の学校に通っていたはずなので、聖書を読まされて
いたはずだ。
そもそも設定がノアの箱舟のようなものである。
しかし、生き残った者は誰も神を信じたりしていない。
主人公の信之にとって、神は美花だけであろう。
その美花にも捨てられてしまうのに、再び日常に戻ってくるのが
すごい。救いのない世界で生きることを選ぶのである。
主人公の妻もまた虚無を抱えて生きている女である。
すべてを知りながら、戻ってきた夫と家庭を復活させようとする
のが怖い。
東日本大震災の前に書かれたことも驚きである。
そういう予兆でもあったのだろうか。単なる偶然だとは思うが。
↓
三浦しをんの純文学系の小説には、女に不自由しない男が多い気がする。
本作なら輔がそうだ。よほどイケメンなのだろう。
映画では瑛太がキャスティングされていた。
アイフルのCMに出ている今野みたいな顔でもよかったのではなかろうか。
そしてまったくモテない。信之の妻も浮気をしないことになるし、封筒も
投函されなくなってしまうので成り立たないが、その方がリアリティが
あるような気がする。