ロシア正教と米国の福音派が手を組んで、LGBTに寛容な政策に
反対していこうとする動きを追ったもので、たしかにタイトル
通り「リベラルを潰せ」という話だった。
しかし彼らが言う「伝統的な家族」とやらは、文化人類学者が
「アホか」と一蹴できるほど根拠のないものだし、そもそもキリスト
教の教祖様はシングルマザーに育てられたのではなかろうか。
さらに言えば、政教分離が厳しく個人主義が徹底しているフランスで
出生率が上がっているのも、彼らの主張が間違っていることの証明に
なると思う。
宗教右派というのは保守派というよりも反近代派とでも言ったほうが
いい連中で、自分が嫌いなものは世の中からなくしてしまえ、と
考える幼稚な人々でもある。
最終章に日本や台湾の動きについても触れてあるが、キリスト教に
関係なく「伝統的な家族」とか「行き過ぎた個人主義」とか主張
している団体にはろくなものがないのではないか。
「行き過ぎた個人主義」というよりは「行き過ぎた資本主義」に
よって様々な問題が発生していると考えた方がスッキリすると
思うのだが。
それにしても、この著者の立ち位置はよく分からない。
宗教右派にもリベラルにも中立の立場であろうとしているように
見えるが、世界家族会議に共感する部分でもあるのだろうか。
もうひとつ、このような宗教右派の動きを中国はどう見ている
のかも気になる。その補助線を入れていたら、もっと深みの
ある内容になったのではなかろうか。