Boaz2015-11-30

水木しげるが亡くなった。
縁あって、四半世紀前に数回お目にかかったことがあった。
仕事場には、マンガの「ポワーン」という擬音がぴったり当てはまるような
雰囲気があった。
謹んでご冥福をお祈りします。



水木しげるは、手塚治虫が手を付けていない分野で、日本のマンガに豊穣さを
もたらした天才だった。


ツイッターでも指摘されていたが、その才能に嫉妬した手塚がマンガに昇華した
作品が「火の鳥鳳凰編」であり「どろろ」である。
どろろ」では手塚も妖怪や化物を描いているが、水木に及ぶものはなかった。


ゲゲゲの鬼太郎」は最も有名な作品で、何度もテレビアニメ化され、実写映画化
もされた。
日本の子どもたちに、一反もめん子泣きじじいなどの妖怪の絵を刻みこんだ。


その一方で、反戦マンガを描く人でもあった。
何しろ戦争で左腕を失っているのだから、マンガの迫力が違った。
はだしのゲン」が日本で戦禍に遭った少年の話だとしたら、「総員玉砕せよ!」は
南方の前線で不条理な戦いを強いられた若者の話である。


これほど説得力のある作品を描くマンガ家は、次の戦争の後まで出てこないだろう。



水木しげるのマンガは、点描で描かれた異常に細かい背景と、単純な線で描かれた
キャラクターが特徴である。


この、リアルな背景は他のマンガ家にも影響を与えたはずだが、さすがに点描の
ような技法は時間がかかるので広がらなかったと思う。


私の想像の飛躍だが、リアルな背景はアニメーションにも影響を与えたのでは
なかろうか。


ジブリが製作した「海がきこえる」では、実写のような吉祥寺や高知が描かれて
話題になった。
一般的なテレビアニメでも、綿密なロケーションで背景を作るようになったのは、
この作品以降ではなかったか。



これほど長生きして多くの人に影響を与えた人の葬儀はどうなるのだろう。
遺骨の一部はニューブリテン島に散骨されるのだろうか。
合掌。