ピンチランナー調書

ピンチランナー調書 (新潮文庫)

ピンチランナー調書 (新潮文庫)

猫猫先生の「江藤淳大江健三郎」の評判がいいので読んでみようと
思ったのだが、私は大江健三郎の小説を「死者の奢り」しか読んで
いない。江藤淳の著作に至っては皆無である。


なので、5年ぐらい前に古本屋で買っていた「ピンチランナー調書」を
読んでみた。これを選んだのは特に理由はない。


で、何とか最後まで読み通して、大江健三郎は何とか読者を楽しませよう、
笑わせようと努力しているのに、私はほとんど笑えなかったことに、自分の
頭の悪さを感じた。


ちなみに、私がちょっと笑いそうになったのは、森・父が妻にカミソリで
頬を切られているのに、森に呼びかける場面である。
主観的には修羅場なのだが、遠くから見ると喜劇のようで、その場面を
想像するとおかしかった。


が、文学的教養のある人ならば、もっといろんな意味を読み取って楽しめる
のだろうな、とも思う。
もしかしたら、森・父の ha ha という文字は、ここが笑うところですよ、
という作者からのサインなのかもしれない。


登場人物にはおそらくモデルがいるのだろう。
これもほとんど分からないので残念だ。
特に麻生野桜麻は誰だったのかが知りたい。


しばらく時間をおいてから「個人的な体験」を読もうと思う。
あと「万延元年のフットボール」も読んでみたいのだが、まだ手に入れてない。
筒井康隆の「万延元年のラグビー」なら読んだことがあるのだが。


そういえば、筒井康隆の小説では、何度か声に出して笑ったことがあった
のだが、これは文学性の問題ではなく、単にレベルが私に合っていたと
いうことなのだろうか。