美人コンテスト百年史

井上章一による、やんわりとしたフェミニズム批判である。
明治時代から現代までのミス・コンテストの歴史をながめながら、
「性の商品化」というクレームを、ゆっくりとほぐしている。


とはいえ、2012年現在、日本ではミス・コンテストはあまり人気の
ある催しとはいえない。
せいぜい、知花くららの名前ぐらいしか出てこない。


その理由は、文庫版あとがきによれば、
1.女性団体の反対運動のため
2.景気低迷のためスポンサーがつかなくなったため
3.美人が社会に拡散していったため
とある。


3については、よくネットで「美人すぎる◯◯」などと評判になる
やつであろう。もはやわざわざコンテストを開かなくても、自分の
主観でいくらでも美人を選べる時代になったということか。


さらに、日本人の場合はティーンエイジの少女を特別視する価値観
が一般化したことや、二次元などの萌えが広く普及したことも理由
のひとつになるのかもしれない。


井上章一は最後に、男が女を品定めすることで始まったミス・コン
テストは、女が女を品定めする方向へ変わっていくだろう、と予言
している。


これは東京ガールズコレクションの盛り上がりで証明されたと言え
るだろう。美人というよりもカワイイを重視しているが、まさに女
が女を見てキャーキャー騒いでいる。


グラマラスな美女よりも、可愛いモデルに人気が集まる日本は、美
人の価値基準の変遷の最先端にいるのではなかろうか。


ちなみに本書によると作家の丹羽文雄はミス・コンテストの審査員
の常連だったらしい。
その孫の丹羽多聞アンドリウBS-TBSでアイドル主演のドラマを
数多く企画しているのをみると、血は争えないな、と思う。