ん―日本語最後の謎に挑む (新潮新書)

ん―日本語最後の謎に挑む (新潮新書)

この本によると、「ん」という文字は、中世まで表記されなかった
のだそうだ。

文献の上で「ン」という文字が使われた最古の例は、現在のところ
康平元(1058)年に書かれた『法華経』だと言われている。(本文p99)


そして、「ん」の発音には少なくとも3つの種類があり、万葉仮名
ではそれらを分けて表記していたとのこと。
(ただし、まだ「ン」の文字は発明されていないから、「ニ」とか
「ム」で代用していたらしい)


録音装置がない時代の発音を推理するのは、非常にスリリングで面
白かったが、確認できないのが残念だ。


それにしても、発音した音声を表記する、というのは人類の特殊な
癖なのだろうか? 
なかには文字のない文明もあっただろうけど、たいていは何らかの
文字で記録している。
それが不思議だ。


通読して思ったのは、日本語における「ん」の役割は、数学のゼロと
同じなのかもしれない、ということでした。