
- 作者:阿辻 哲次
- 発売日: 2020/02/13
- メディア: 新書
分かりやすく面白く書いてあるのでぜひ読んでいただきたい。
名前に使える漢字がどのように増えていったのか、という話も興味深い
ものだった。
筆者は法務省の法制審議会人名用漢字部会の委員の一人に選ばれて、
戸籍で使える人名用漢字について話し合いをしたそうだ。
そのなかで、ローマ字は使用できるか、という話題になった。
だから人名用漢字を見直すなら、今回が絶好のチャンスだから、この際
法律を改正して、ローマ字はもちろんのこと、朝鮮・韓国語で使うハングルや、
中国で使われる簡体字の字形も戸籍上の名に使えるようにするべきだ、という
意見があった。会議でその意見を述べた委員は、国際的に活躍する人物として
しばしばテレビ番組などにも登場される方なのだが、しかしその意見を聞いて
いて、失礼ながら私には暴論としか思えなかった。
もしローマ字やハングルが名前に使えるのだったら、アラビア文字や
ギリシャ文字、ロシア語の表記に使われるキリル文字、あるいはインドや
スリランカで使われるタミール文字なども使えるようにするべきである。
英語やフランス語・ドイツ語に使う文字はOKだが、ギリシャやロシアの
文字はだめだというのは、あきらかに差別である。
(p106)
私も著者の意見に賛成なのだが、この暴論をとなえた人は誰なのだろう。
法制審議会人名用漢字部会で検索すると、法務省の議事録がすぐに出た
のだが、肝心の委員の名前はすべて伏せられていた。
当時の新聞を当たるしかないのか。
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そういえば本書には白川静が全く言及されていない。
阿辻哲次は彼に批判的なのだろう。
専門家のあいだでは、誰と誰が対立しているのか自明なのだろうけど、
素人にはさっぱり分からない。
誰か一覧表にしてくれないものだろうか。