戦争の社会学

タイトル通り、戦争についてこれを読めばだいたい分かる感じがする。
私は素人なのでそう思ったのだが、ミリヲタが読むと違うかも。


個人的には前半部分がジャレド・ダイアモンド的な話の進め方でぐいぐい
読めた。後半のグロティウスが出てきたあたりからは、法律論みたいな
話になって、読むスピードが落ちた。


現在の非対称戦争は、先進国(というか米国)への、貧困と宗教が混じった
反撃のように思える。
だとしたら、貧困を何とかすれば戦争やテロも回避できるのでは、と考える
けれども、それは社会学ではなく経済学の話か。



ところで、本書とは関係ないのだが、米国には退役軍人省という省庁がある
らしい。不勉強なので最近まで知らなかった。
米国の国家予算は国防省に最も割当られ、次が退役軍人省だそうだ。
主な仕事は、文字通り退役した軍人への福利厚生である。


なるほど、米国は世界最強の軍隊を持っていて、退役軍人にも手厚い国なのか。
当たり前だが、米国は戦争マシーンなのだな。
そして、軍人は日本人が想像する以上に身近な存在なのだろう。


先日テレビで耳にしたのだが、いま行われているパラリンピックも、もともとは
傷痍軍人のために開催されたものだそうだ。
出場している人それぞれの事情があるが、軍人が多いのは驚いた。


だから日本も戦争に対するリアリティを持て、というふうに話を持っていけば
いいのだろうが、そのあたりはなんかモヤモヤするのである。



もうひとつ話は飛ぶが、、いまのシリア内戦について考えると、アサド大統領が
悪のアイコンになっていないのが不思議だ。


イラクフセイン大統領は、それこそ最悪の独裁者みたいなイメージで写真が
メディアにたくさん掲載されていたと思うが、アサド大統領の写真はあまり見ない。
それとも欧米では頻繁に報道されているのだろうか。


中東の指導者で悪のアイコンだったエジプトのムバラク大統領とかリビア
カダフィ大佐とかは、アラブの春でいなくなってしまった。


欧米のメディアは、あまり悪のアイコンを宣伝すると収集がつかなくなると
学習したのかもしれない。


逆に、東アジアでは金正恩がその役割を担っている。
彼を暗殺できたとしても、その後の混乱が予想できるので、誰も火中の栗を拾い
たがらないのだろう。