大昔の少女マンガのような設定である。
つまり、いじめられているヒロインがいて、それを見守る王子様がいて、
強く生きる、という。
エロマンガ家のゴージャス宝田は、鬼畜系の作品は私生活が順調でないと
描けない、と語っていた。
このドラマは、主人公がひたすらいじめられる物語である。
しかも冒頭のシーンでは、ビルの屋上から飛び降りているので、あまり救
いがなさそうだ。
こうした内容のドラマを楽しみに視聴できる人は、私生活が充実している
のだろう。
私は、架空の話だと分かっていても、見ていて辛い。
できれば、最後には榮倉奈々が幸せになってほしい。
それにしても、いじめが発生する現場というのは、きわめて生産性が低く
なるのではないか、と思う。
この話でも、新入社員の主人公を正しく指導していれば、余計な残業など
しなくてよかったわけだし、そういう状態を放置している上司は無能極ま
りない。
段田安則は「不毛地帯」でも無能な上司を演じており、それが実にはまっ
ている。うまいキャスティングだと思う。
気になった点を二つ。
一つは間違って社外秘の書類を送信した件。
主人公のせいにされていたが、社外秘の資料を誰が持っていたかが分かれ
ば、責任の所在はすぐに分かるはず。
普通、新入社員にそういう資料は持たせないのではないか。
もう一つは、屋上で泣いていた榮倉奈々に藤木直人が言った言葉だ。
「生き残りたければ強くなれ。闘わないで守れるものなど一つもないんだ」
この言葉は問題をすり替えている。
社会では確かに強さも必要だが、いじめはやった者が絶対に悪いのである。
いじめの被害者に「強くなれ」というのは間違っている。
私が一番ゾッとしたのは、榮倉奈々の同期入社役の杏である。
でも、こういう女は確かにいる。女子は学生時代からこの手のビッチを
相手にしなければならないのか、と思うと気の毒でしょうがない。