メイちゃんの執事

中2女子が鼻息を荒くして、水嶋ヒロのために録画したというドラマ「メイちゃんの
執事」を見た。
原作のマンガもウェブ上で数ページ読むことができたので、だいたいの設定は分かっ
た。


オッサンが見るドラマではないけれど、脚本やキャストともによかったと思う。
髪をバッサリ切ってショートにした榮倉奈々は、NHKの朝ドラの失敗を取り戻してい
るし、演出のテンポもキレがあった。


平凡な少女が実は大金持ちの娘で、という物語は、少女マンガでは古典的なものだが、
恋愛の対象が執事である点が今風だ。
大ヒットした「花よりダンゴ」では、主人公が恋に落ちる相手は大金持ちの同級生だ
ったし、やはりスマッシュヒットしたドラマ「花ざかりの君たちへ」でも、恋愛の対
象は同じ学校の男子である。


その対象が執事になったのはどういうことか? 


私が思うに、自分のわがままを何でもかなえてくれる恋人を所有する全能感が、視聴
者にフィットしているからではなかろうか。


つまり、男ならばメイド、女ならば執事は、立場に上下関係があり、相手は自分に対
する忠誠心を持っている。
自分を嫌いにならない相手を恋愛対象にすることで、傷つくリスクをほとんどゼロに
して、欲望を最大化しているところが、まさに今どきのロマンスなのかな、と分析で
きる。


実際はメイドや執事を持てるはずもなく、このようなヴァーチャルな恋愛を非現実的
だと嗤うことはたやすい。


だが、このような宝塚的なドラマが企画され、(たぶん)ヒットしているということは、
ドラマの視聴者の多くが、リアルな恋愛に飽きているのではないか、とも考えられる。


現実の恋愛はけっこうしんどいし長続きしない。あるいは片思いに終わったり傷つく
こともある。
だったら、ありえない設定でイケメンを眺めている方が楽しいではないか、という人
が多くなっているのかなぁ、と。


そういや、このドラマに登場するお嬢さまたちは、いっさい携帯電話を使っていなか
った。
おそらく常にそばにいる執事たちは、携帯電話のメタファーなのかもしれない。