*[本]86 エイティシックス 1巻

鳴り物入りで始まったアニメを見たのだが、今ひとつ面白くない。
たまたまブックオフで売っていたので第1巻だけ買ってみた。


「ふと、微かな慨嘆に揺らぐ」とか「茫洋と凍りついたようだった
黒瞳が罅割れ」という妙に難しい言い回しや、むやみに出てくる
ドイツ語のフリガナで表現される中二病的文章、おじさんも
嫌いではないが読むのに疲れる。



まあ、これは「進撃の巨人」から派生したライトノベルのひとつ
なのだろう。
しかし、人種差別という深いテーマを扱うには、作者の力量が
不足していたように思う。
はたして作者は「夜と霧」を読んだことがあるのだろうか? 


1巻を読み終えると、共和国は滅んでしまい読者に対する
カタルシスはある。アニメはそこを描いていなかったので
中途半端に終わった印象があった。
おそらく2期があるので間延びさせたのだろうが、これは
シリーズ構成が無能ではなかろうか。



この手のデスゲーム的設定の話で気になるのは、主人公たちは
ゲームをうまくやることに能力を集中させているが、ゲームを
管理している人たちを攻撃することはあまり考えないことだ。


もちろん最終的に管理者が破滅する展開もあるのだけれど、
与えられた設定は覆せないものだと諦めているフシがある。


この小説でも、反乱することもできるだろうに、組織的な
抵抗はしない。いちおう反乱を抑える設定はあるのだが、
読んでいて不思議に思った。


作者の意図はよく分からないが、政治的に去勢された若者が
描かれているのは時代を反映しているのかもしれない。
自分たちが声をあげても世の中は何も良い方向に変わらない、
という諦めを抱かせたのは、ひとりの大人として申し訳ないと思う。


続刊ではどんな展開になるのか分からないのでアニメ2期が
楽しみではあるが、このラノベのどういうところが若者に
受けたのかに興味がある。


それにしても、サンマグノリア共和国の報道機関は国営のもの
しかなかったのだろうか。あと選挙制度がどうなっていたかも
気になる。


そうそう、作者は権利と義務がトレードオフの関係だと思って
いるようだが、権利とは何もせずとも備わっているものだという
のが近代以降の解釈です。