私は中学生のころ、一度だけUFOを見たことがある。
友だちと天体観測と称してマンションの屋上に上り、お菓子とかジュースを持ち込んでいろんな
話をしていたことがあった。一応、小さい天体望遠鏡を持ち込んではいたが、最初に覗いたきり
で放っておいた。
9時ぐらいになって、もう遅いから帰ろうと思ったとき、北の空をオレンジ色の物体がスーッと
流れるように横切っていった。
友だちも見ていたので、私の目の錯覚ではない。
すげー、UFOだぜー! と騒いだものの、写真も撮ってないし、人に言っても信じてもらえない
だろうし、結局うやむやになってしまった。
いま思うと、あれは山道を走るクルマのライトだったのではなかろうか。
1960年代から70年代にかけては、UFOの話題がかなり盛り上がっており、少年たちは胸をときめ
かせていたものだった。
ところが、いまや宇宙人とか円盤なんて雑誌「ムー」に載るぐらいだ。
なぜそうなってしまったのか、もういちど検証してみようというのが、この本である。
新・UFO入門―日本人は、なぜUFOを見なくなったのか (幻冬舎新書)
- 作者: 唐沢俊一
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/05
- メディア: 新書
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本書では、UFOが報道された最初の事件まで遡り、アダムスキーが登場し、日本でどのような
UFO研究団体が設立され、どういう影響があったかを解説している。
そして、これまで科学的でないと切り捨てていたバカらしい話にこそ、UFOの真実があるのでは
ないか、という結論に至る。
いつだったか、タレントの大槻ケンヂがテレビ番組で、なぜみんなUFOが存在するか否かでしか
話をしようとしないのか、と怒っていたのを見たことがある。
そのスタンスは、まさにこの本で最終的に述べられていることに近い。
UFOや宇宙人の話は、日常から逃れたい人々の心が作る幻のようなものであろう。
ただ、その幻にも流行があり、昔はUFOだったのが、いまは前世とか占いにシフトしているのだ
と思う。
ところで、マンガではUFOネタが本当にたくさんあった。
「うる星やつら」では屋上で“ベントラ・ベントラ・スペースピープル”と輪になって呼びかけ
ていたし、「エスパー魔美」ではUFOのニセ写真騒動が作品になっていた。
ていうか、私個人ではとてもフォローしきれないぐらい、UFOや宇宙人は当たり前のネタとして
存在している。
たとえば、すぎむらしんいちの「超・学校法人スタア学園」でも、次のようなコマが落ちになっ
ている回があったが、ちゃんと作者が手書きで『最後の2コマはウソです』と
言い訳(?)している。
もう、90年代の半ばになると、UFOはギャグのネタにもならないほど使い古されたネタになって
いるということか。
しかし、次に紹介する土田世紀の「編集王」11巻のエピソードは違う。感動するのだ。
編集王 11 金色のライオン (BIG SPIRITS COMICS)
- 作者: 土田世紀
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1996/10
- メディア: コミック
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少年のころにいじめられていた。
その中学高校時代の回想が、ほぼ単行本の半分を費やして語られており、孤独だった明治の話相
手になっているのが、宇宙人なのである。
ここに登場するUFOや宇宙人は、存在するかどうかという種類のものではない。
いじめられた明治が唯一よりどころにする何かである。
それは彼にしか見えないかもしれないが、彼にとっては絶対に在るものなのだ。
だから、日常を脱出するチャンスが訪れたとき、彼の脳裏にはUFOと宇宙人がハッキリと浮かぶ。
日本で70年代に少年期をすごした人にとっては、UFOはそのような形でリアルだったのだ。
その後、明治はあることをきっかけに吹っ切れて、UFOや宇宙人を見なくなっていく。
切ない話なので、ぜひ読んでみてほしい。
00年にフジテレビでドラマ化されているが、調べてみても明治の役は記載されていない。
たぶん省略されてしまったのだろう。
そういえば、土田世紀は最近どんなマンガを描いているのだろうか?