B級グルメが地方を救う

B級グルメが地方を救う (集英社新書)

B級グルメが地方を救う (集英社新書)

「B級」というのは、小林信彦によると一種の差別用語であったらしい。
私の知る限りでは、この言葉は映画のランクから出てきたものだそうだ
が、ちゃんと確かめたわけではないから間違いなのかもしれない。


それはともかく、全国各地にある、1000円以内でお腹がいっぱいになり、
なおかつ個性的な美味しさを持つものをB級グルメと定義して、可能な限
り紹介しているのがこの本だ。


読んでみると、たしかに美味しそうで、行って食べてみたくなるものも
いくつかあった。
ただ、わざわざ現地まで足を運ぶのもなぁ、というものがほとんどで、
そこがB級のB級たる理由なのかもしれない。


8割ぐらいが全国のB級グルメの紹介に充てられているが、最後の方に、
なぜB級グルメが誕生したのか、そして地域振興にどのように生かすべ
きかが書いてあり、しっかりと分析していた。


この本には書いてなかったが、多くのB級グルメは、地方で工場労働者
が大勢いたところに生まれている。
安価でボリュームがあり、そこそこ美味しいのはそのためだろう。


高度成長期にこのような食品が次々と誕生しているのは、産業構造によ
る部分も多いのではなかろうか。


ということは、今後は地方で多くの労働者が見込めない以上(海外の
安い労働力を求めて工場が移転しているから)、地域振興のためのB級
グルメはなかなか誕生しないのではないか、と予測される。


例外的には、日系ブラジル人労働者を多く抱える地域で、ブラジル料理
がその役割を担う可能性があるけれど。


本書では

 B級グルメで注目を集めている地域を見てみるといくつかの共通点がある。
まず第一に、キーパーソンの存在である。まちづくりには、三つのタイプの
人間の存在が不可欠であるとよくいわれる。それは、いわゆる「若者、よそ
者、バカ者」である。


 若者とは、文字通り若い人のことであるが、前例にとらわれず柔軟な発想
でまちづくりにチャレンジする人のことを指す。年齢的な面だけでなく、精
神的な若さを持っている人も含まれる。よそ者は、その地域外の人のことを
指す。地域のソトで生活した経験から、他地域との比較ができて、冷静のそ
の地域のプラス面、マイナス面を分析することができる人だ。Uターンして
地域に戻って来た人もソトの視線を持っていることからよそ者に加えること
も可能だろう。そしてバカ者は、その名の通り、まさに個人的な利害を度外
視して、まちづくりに邁進する人のことを指す。このような存在がB級グルメ
にとって欠かすことができないのだ。

とある。


私の住む松山市には、残念ながらこれといったB級グルメはない。
全国から有名なラーメン店を集めた「ラーメンステーション」も、集客力が
なく、事実上失敗したといっていいだろう。


これは、松山にいる「若者、よそ者、バカ者」の声を無視したせいか、ある
いはそういう人がまったくいなかったかのどちらかであろう。


保守的な地域では、まちづくりはなかなか困難である。
愛媛の食材というと、みかんとか鯛を持ち出して、それでなんとか名物を作
ろうとテレビ局主体となって企画しているが、いまだに定着したものはない。


いっそのこと、愛媛の食材とは何の関係もない、例えばハヤシライスとかを
B級グルメとして売り出した方がいいのではないかと思える。


これは私の偏見なので本気にしないでほしいのだが、松山の人は味オンチが
多い。
地元の人に支持されないとB級グルメは生まれないそうだから、悲観的だが
松山には永久に地域振興の起爆剤になるような食べ物はできないと思う。


瀬戸内の魚だけでは、なかなか観光の目玉にはなりますまい。