非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

ヘンリー・ダーガー 非現実の王国で

連休に東京へ行ったとき、ヘンリー・ダーガーという人の伝記映画を渋谷で見た。
たぶん田舎には回ってこないだろうと思ったからだ。


ヘンリー・ダーガーは雑役夫をしながら貧しく孤独な一生を終えた人で、死後に15000ページ
を超える小説とイラストが発見され、それが有名になった。


生前は全く無名の人だったので、Darger を「ダーガー」と読むか「ダージャー」と読むかさえ
不明だ。写真も3枚しか残されていない。


基本的には変態のオッサンなのだが、あまりにも巨大な作品を残したために、かえって評価が
高まるという奇妙なことになっている。
たぶん、この大長編小説を通読できた人は本人以外はいないのではないか。


イラストも、ほとんどは広告に掲載されている少女の写真をトリミングしたもので、本人のデッ
サン力はあまりない。
けれども、色使いや構成には異様な迫力があり、ふしぎな魅力を持っている。


映画では、残されたイラストをCGで動かしており、ショボい出来だったけれど面白かった。


私が気になったのは、首を絞められる少女の表情である。
眼球と舌が飛び出しており、どうやらホンモノの死体写真でも見たんではないかと思われる
描写だった。


自分の妄想を何十年も作品にし続ける体力には本当に感心するが、もしこの人が日本に生ま
れていたらどうだったろうか、と想像する。
意外と同人誌か何かを作っていたかもしれないし、引きこもりになっていたかもしれない。


米国は少女への性愛を極端に抑制したところだから、このような変な人が出てきたのだろう
か。逆に日本はそのあたりがゆるゆるなので、適当に発散できて、妄想が一人の人間に沈殿
しないのかもしれない。


ちなみに死後、ダーガーの作品を発見したのは、おそらく米国人と結婚した日本人であろう
キヨコ・ラーナーという大家さんだったそうだ。
そこに日本との因縁を感じてしまうが、これは私の妄想である。