自由軒のカレー

友だちが大阪にいたとき、帰省の途中で寄り道して遊んでいた。
いつだったか、大阪の有名なカレー屋「自由軒」に案内してもらったことがあった。


夫婦善哉」を書いた織田作之助が愛したといわれるカレーだそうで、どんなものかと思って
出てきたのを見たら、ルーとライスが完全に混ぜられているものだった。トッピングは生卵で
ある。


最初に見たときは、正直、引いた。
なんて気持ちの悪いものを食ってるのだろうか、と思った。
しかし、一口食べてみると意外と旨い。
なるほど、確かに有名なだけはあるな、と妙に感心した。


そのときはそれで終わって、私がカレーを食べるときは、ルーとライスを最初から混ぜること
はなかったのだが、ある日ふと鍋に残っているカレーを見たとき、これにライスを入れてみた
らどうだろうか、と思いついた。


つまり、ルーの量がライスにかけるには少ないが、混ぜればちょうどいいのではないか、とい
うのが一つと、皿につがなければ洗い物が鍋ひとつで済む、という二つの理由からだ。
これに生卵を混ぜれば完璧である。


早速やってみると、これが旨いのだ。
下品だし人に見せられるものではないが、鍋肌にこびりついているルーをこそぎ落とすように
食べていると、しみじみカレーを作ってよかった、と思える。
鍋もきれいになるし、一石二鳥だ。


今日もその鍋カレー+生卵で晩飯を終わらせた。
人前ではできない、プライベートな楽しみのひとつである。
たぶん、多くの人が秘かにやっているんじゃないかと思うけど、恥ずかしいから公表してない
のだろう。