大人の見識

大人の見識 (新潮新書)

大人の見識 (新潮新書)

バカの壁」と「国家の品格」を大ヒットさせた新潮新書が、とうとう阿川弘之先生に説教本を
書かせた。
個人的には彼のようなお爺さんは大好きなのだが、この本が売れるかどうかは分からない。


阿川弘之といえば、海軍である。
私も「山本五十六」「米内光政」「井上成美」を愛読したものだ。
こういう本流がある一方で、乗り物オタクなので「阿房列車」などの旅行記も書いており、どち
らも面白い。


現在は文藝春秋司馬遼太郎のあとを受け継いで巻頭言を書いており、文壇の重鎮ともいえる人
である。


彼の人となりは、遠藤周作北杜夫のエッセーに面白おかしく描かれている。
特に遠藤周作は、エッセーで阿川の鉄道オタクっぷりをしきりにからかっており、ずいぶん仲が
良かったみたいだ。


さて、「大人の見識」だが、読む前からだいたいどんなものかは分かっていた。
これはお爺さんに説教されたい人が読む本である。
藤原正彦はお爺さんというにはまだ若いけれど、養老孟司阿川弘之はお爺さんと断言してもよ
ろしかろう。


そういう人の悲憤慷慨を読んで、しみじみ怒りを共有するのが説教本の正しい味わい方だと思う。
養老孟司は解剖学、藤原正彦は数学、阿川弘之は海軍と、それぞれ確固としたバックボーンがあ
り、そこから導き出される人生訓というべきものが、多くの読者の共感を呼ぶのだろう。


それに、三人ともどういうわけか英国好きである。
恐らくどこかで、明治期のリベラルなエートスを濃厚に受け継いでいるのだろう。
140年培ってきたものが、ほぼ失われつつある今、何とかその精神を残したいという思いがある
のかもしれない。


実際は現在の英国でも、失業した若者がひどいことをしていたりして、けっこう退廃していると
思うが、なにせ近代になって一度も戦争に負けたことのない国である。
そりゃ、同じ島国のエリート層が憧れるだろうなぁ、と思う。


そのうち英国のような厳格な階級社会になって、日本にもエスタブリッシュメントが顕在化すれ
ば、英国好きのお爺さんたちも安心するかもしれない。
たとえ下々のことは考慮に入れてないにしても。


本文と写真はまったく関係ありません

( ´酈`)<セーラー服は水兵さんの服なのれす