鉄道ひとつばなし

鉄道ひとつばなし (講談社現代新書)

鉄道ひとつばなし (講談社現代新書)

以前、同じ著者の「滝山コミューン一九七四」という本を読んだ。
彼が小学生のときの体験を書いたもので、その中に、自分は小学生の
ころから鉄道オタクだった、という描写があった。


学者になってからも、その趣味を捨てることなく、このエッセーに凝
縮させたのが本書である。
天皇についての著書もあるので、皇室と鉄道のつながりなどの話題も
あるが、話題は多岐にわたっており、読んでいて飽きない。


あとがきも味わい深い。
宮脇俊三と比較するのもおこがましい、とあるが、内田百輭や阿川弘
之から続く鉄道エッセーの衣鉢を継ぐのは原武史だろうと思う。


東大大学院の助手が任期満了になり、山梨学院大学明治学院大学
移っている。山梨学院大学に勤務していたころは精神的に不安定だっ
た、とあり、私はなんとなく小谷野敦を思い出した。


オタク的な趣味とアカデミックな学識がひとつになったもの、という
のは、なかなか見つからないし、あってもあまり面白くない。
(例えば「ガンダムと日本人」とか)


この鉄道エッセーは、それがうまくいった一冊だと思う。
好評なのか、同じ講談社現代新書で2と3も出ている。
読むのが楽しみである。